七月二十三日に第四章をwordに打ち込んだ。1万6千字。よくやく冒頭が終わった。その時書いている章は毎日推敲しているが、全体の推敲はまだ一度もしていないので、試しにkindleで推敲してみると最初の一行で今までと違う感触があった。ロゴーンに突っ込んでみても、いつも井上靖と出ていたのが遠藤周作に変わった。良い悪いは別にして違う物が書けているようだ。

 五月から書き始めて七月の下旬までの約三か月で1万6千字。この調子だと完成まで2年ぐらいかかりそうだし、それだけ時間をかけても10万字を超えないかもしれない。時々今まで使った時間を考えてゾッとする瞬間がある。去年『流星を打ち砕け』の仮書きを書き始めたのも『ペンギンと太陽』と同じくらいだが、7月にはもう千秋がユニコと一緒にアイスクリームを子供たちに配っているところまで書けていた。

 今回は書き方が違うとはいえ進みが遅いのは間違いないので、どうも焦ってしまう。別に小説の完成をだれに急かされているわけではないが、一つの小説とじっと向き合うのは息苦しい。一つの章を何度も推敲して書き直すので、word上では何日も進まないわけで、何日も書いて書いて書きまくっているが、wordに打ち込まないのは自分がそれを許さないからで、実はよくよく考えていると何日も書けないでうんうんうなっているのと同じ苦しみがあるのだと気付いた。無意識で起きていたことを意識的にしているに過ぎない。一か月に一日か二日しか書けない超スランプ状態で書いているのと同じで苦しくないわけがないのだ。

(おわり)

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