今まで母艦として使っていたパソコンがとうとう壊れてしまった。ネットで動画を見るとフリーズするレベルのスペックで、おまけに3年前からはwordでさえ止まるようになって、執筆中のデータが飛ぶことが月に何度かあったのだが、体になじんでいたので小説を書くのはもっぱらそのパソコンでだった。

 

電源が点かない時に最初に考えたのは小説が書けないということだ。しかもプロットができて、さぁ、今日から書くぞというタイミングだったので、小説の神に見放されたのではないのかと思った。しばらく呆然とした後にネットで調べたことを色々試したのだが結局電源は点かなかったので、二時間ぐらい何にもする気が起きなかった。

 

 布団に入ると、もう私は小説を書けないぞ、と落ち込んだ。ブログとか、しょうもない文章ならともかく、あのパソコン以外で小説を書けるとはとうてい思えず、右腕を失ったみたいな気持ちだった。とはいえ悩んでいても仕方がないし、壊れてしまった物は仕方がない。あのパソコンはかなり古くなっていたし、いつかはこうなっていたのだろう。むしろ書いている途中でこうならなくて良かった、と気持ちを切り変えた。

 

 こうして私は古いパソコンを処分することに決めた。ケーズデンキに持っていくとパソコン本体の処分費は何故か無料で、ディスプレイに2500円ぐらいかかった。店頭の若い店員はブラウン管の前時代的なごついディスプレイを見て目を丸くしていた。

 

それからパソコンの権利を放棄する旨を書いた紙に署名して10年以上付き合いのあったパソコンとお別れした。ずいぶんあっけないもので、ヴァイオリンの悲しそうな音色が流れたり、涙が出たりもしなかったのだが、胸の中にぽっかり穴が開いてしまった。でもやっぱり処分して良かったとも思った。

 

机の上が綺麗になると気持ちがふわふわしたので部屋の模様替えをした。机も部屋の端から端へ大移動した(部屋の真ん中に机を置く人なんていないだろうけど)。本の山の場所も変えて、布団の敷く方向は逆にした。そのせいか昨日はよく眠れた。これから今までと違うパソコンで書くことになるが何だかうまくいきそうな気がした。

 
(おわり)
destoroy PC

※追記:HDDデーターを狙う犯罪集団なんているのだろうか。私は不安だから一応HDDは抜き取って手元に置いてあるが、個人の廃棄PCを狙っても割に合わないので存在しないような気がする。