3年前に群像新人文学賞に送ったことがある。その年は例年になく予選突破者がいたらしいのだが、私は箸にも棒にも引っかからなかった。電話番号を送り忘れたから一行も読まれずに落とされたのだと今でも思っている。というかそうであって欲しい。小説以外の部分で落とされたという方が自分が慰められるから。

 前回はこういうのを書けばいいんだろうという気持ちで書いたから、今度は逆に忖度しないで書くことにした。そうしたら本当に通りそうにない物ができたんだけど、落とせるものなら落としてみろという気持ちもある。締め切りまで時間はあるけど、今回はこれを思いっきりぶつけてみよう。

 今回意識したのは自由さだ。小説はどんな物でも書いていい。現実では手から落とした石は地面に落ちるが、小説では空に落ちてもいいし、壁が喋ったり、5+3が10の世界を書いてもいいのだとある時に気付いた。現実を追認するのではなく、現実にとらわれない小説。リアリティだとか、社会性だとか、時代をえぐるとか、究極的には文学的とか、そんなことからも離れた小説。間違いを踏み抜く気持ちで飛んでみよう。

(おわり 2018年8月8日 牛野小雪 記)

小説なら牛野小雪【良い本あります】