『黒髪の殻』は群像新人賞に出すために書いた物で、この辺りから意識的に書き方を変えた。火星の辺りは改稿していても強くてニューゲームぐらいガンガン改稿できたけれど、この辺りからちょっと跳ね返してくるようになった。嬉しいような面倒くさいような複雑な気持ちがする。

 この小説を読み返して、どうして落ちたんだろうと色々考えるのだけれど『文学』を書こうとしたからではないだろうか。というより書き始めの発想に『文学』とはこういう物だろうという考えから出発していて、そのイメージに合うような小説を考えていた。でもそれは過去の『文学』から作られたイメージであって新人賞という場にはふさわしくなかったのかもしれない。書いている時にも古典的すぎやしないかと思っているところはあった。

 あるいはこうも考える。新人賞という場に出すのだから人に、審査員に気に入られようという下心から、いつも通りの小説を書かなかった。こういうのが良いんだろ、みたいな不遜な考えも持っていた。そういうところを見透かされていたのかもしれない。もし次出すことがあるなら、絶対に審査員が受け入れそうにない小説を書いてみたい。

 そういう意味では去年のよしもと原作プロジェクトに出した『ブラッドエグゼキューション』なんかはけっこう良い線行っていたようだ。大事なのは気負わないこと。

(2018年 5月12日 牛野小雪 記)