オオカミと暮らす哲学者の本に(α)アルファオスと(ω)オメガオスのことについて書いてあった。オオカミとはいえ同じオスのことなので熱心に読んでしまった。アルファオスとは群れを率いているリーダーのことで分かりやすく言えばボス、親分みたいなものである。対してオメガオスとは群れで一番弱いオスのこと。もっと分かりやすく言えばいじめられっ子みたいなものである。


オメガオスの辿る人生ならぬ狼生は悲惨なもので、他のオスからはもちろん、メスやその子ども達からもいじめられる。大抵はそのまま弱って死んでいくのだが、時には群れを飛び出し、一匹狼になったり、別の群れを作ってアルファオスになることもあるそうだ。


私はこれを読んで感心した。弱い奴でも厳しい鍛錬を積み重ねれば人生を、いや狼生を切り開けるのだ。しかし、悲しいことにも気付いてしまった。オメガオスが生き延びるには、どうやら元いた群れから出なければならないらしい。いじめられつつも徐々に頭角を現し、群れの中でのし上がって、アルファオスになることはないようだ。


オメガオスはたいてい体格が弱いオオカミだが、知恵や経験でそのハンデは覆せる。しかし、過去の意趣返しはできないらしい。ちょっと悲しいお話。彼らは群れを出て孤独になるか、別の群れに行くしかない。


人間の群れでも同じで、いじめだったり、パワハラだとか、ブラック企業がどうのと色々あるけれど、小説やマンガみたいな逆転劇は起こりえなくて、過酷な状況を脱するには群れを抜けるしか選択肢がないのかもしれない。


虐げられた者は、孤独に森をさまよい、新しい群れを見つけるか、アルファになるか、あるいは孤独に死んでいくしかないのだろうか?


もしそうだとしたら悲しいことだと思う。


(2017年11月28日 牛野小雪 記)


小知識:ギリシャ字でアルファ、オメガは小文字でα、ωと書くらしい。