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ついこの前『イージーライダー』を見た。言葉だけでは結末を知っていたのだが「えっ、このタイミングで?」と驚くような終わり方だった。まさに衝撃のラスト。あれには賛否両論あるようだ。
エンドロールの間に色々考えてみると、なかなか面白い考えが湧いたので、ここに雑感を書いておく。


物語はとっても暗喩的で自我の旅を暗示している。
この映画の主人公ワイアットとビリーは自我をメタファーしている。
ワイアットが精神的な自我で理想的、でビリーは肉体的な自我で衝動的。
物語の冒頭で二人は麻薬取引で大金を得る。それを元手にバイクに乗り謝肉祭(文化的な背景がよく分からないが、有名な祭りっぽい)を目指す。ここでBGM にかかるのが『born to be wild』ワイルドに行こう と訳せるが、物語的には私は生まれたてと訳す方が良い気がする。

ワイアットとビリーが始めに立ち寄るのは農業を営む家族の家。
古臭いながらもお互いに信頼し合っている家族像が映される。
地面に根を生やして、自然の恵みを受けて暮らしているのは、
幼児期の自我で親の愛情たっぷりの環境を暗喩している。
しかし、いつかは子供が成長するように二人もその家を後にする。

次に立ち寄ったのはヒッピー達のコミューン。
ここにいるのは若者だけで、親らしき人もどことなく友達っぽい雰囲気だ。
彼等も地面に根を生やして暮らそうしているが、種を蒔いている場所は乾いた砂地。目は出そうにないし、仮に出たとしても実りを期待できそうにない環境だ。
これは子供達だけの社会を暗喩している。
俗に言う秘密基地を作って遊んでいるような頃(最近の子供にもそういう場所ってまだあるのか?)。
ギャング期とも言うそうだ。
自分達では世界を作っていると思っているが、現実には成立しない仮の世界。
秘密基地がいつかは放置されるように二人はコミューンを後にする。

次に立ち寄ったの町ではパレードの参加して、警察に捕まり留置場にぶちこまれる。
アメリカでは12年制のはずで、中学生はなかったはずだが、ここからは日本でいう中学生時代を暗喩している。
自我が発達してきて、学校の環境が窮屈に感じられてくる頃。
周りの人間からは白い目で見られたり、外見をからかわれたりするようになる。

ちなみにここからは弁護士を後ろに載せて旅をするようになる。
彼の話やその身の結末は思春期特有の物を現している。
UFOの話を真面目に語るのは中二病。
アメフトを諦めた話はヒーロー願望の挫折。
最後に弁護士自身が殺されるのは勉学での挫折といったところか。

彼等が最後に立ち寄ったのは娼館(知らない子はお父さんかお母さんに聞いてみよう)。
ここで二人の娼婦と謝肉祭を楽しそうに練り歩く。
朝まで歩き回ったあと、彼等は墓地でLSD という薬物を吸引する。
ここでは一転感傷的な雰囲気がずっと続く。
これらは思春期真っ只中の恋と冒険を象徴している。

さて、物語の最後に話を進める前にここで少し話を変える。
ワイアットとビリーが走り抜けてきた道だ。物語の始め、彼等はカラカラに乾いた白い砂漠を走っていた。旅が進むにつれて緑が増えてきて、最後には川まで出てくる。これはアメリカ社会(私としてはアメリカだけでは無いと思う。成長するにつれて自我が触れる外界であろう)の豊かさを象徴している。

その道を走り続ける二人に一台の車が近付いてくる。
オンボロで埃を被った、しかし超実用的なトラックだ。
そのトラックに乗っているのは髪を切り揃えた若者と中年の男。
ワイアットとビリーは中年の男に遊び半分で撃ち殺される。

トラックとショットガンは学校を卒業したあとに触れる社会の象徴。
彼等は学校よりも強力で自由気ままに振る舞いを決して許さない。
社会の力はあまりに強力で遊び半分の軽い気持ちで、個人の自我(映画内の言葉を借りれば自由)を刈り取っていく。

自由を謳うアメリカも実際のところははみ出しや逸脱を許さない全体主義じゃないかという皮肉が込められている。
映画ではアメリカアメリカというが、これは現代の日本でも当てはまるんじゃないだろうか。
学校でも社会でも個性個性というが、本当のところ個性的な人間が現れると、その芽は早いうちに潰されるだろう。潰れなきゃ死ぬかドン底まで落ちなきゃならない。
イージーライダーは息の詰まりそうな世の中じゃ、きっと最後には自我を撃ち殺されるぜ。それもいきなりズドン!ってことを暗喩した映画だった。

所詮人間というものは自分のフィルターを通してしか物事を見ることができない。だからこんな事を考えたんだろうな。多分作者の意図とは別物で私の勘違いか偶然だと思う。