愚者空間

牛野小雪のサイトです。 小説の紹介や雑記を置いています。 あと短い話とか。

カテゴリ: 試し読み


高校を中退した正人は叔父のすすめで大工に弟子入りする。
いつかは親方を殺すという執念でもって正人は三年の修業をくぐり抜けた。
しかし正人は半分無実の罪で刑務所に入ってしまう。





 気付けばいつも嫌われている。理由は分からない。ある時それに気付き、人に好かれるように気を使っていた。そのおかげで人に好かれるようになったが、それでも嫌われた。人生でこれ以上面白い事はないと楽しんでいる最中に、ふっと剥き出しの敵意を向けられたり、お前とは一生の友達だと言った相手が、死ぬまでお前を許さないという感情をこちらに向けてきた事もある。そういう記憶は正人の心に深く爪痕を残した。

 中二の秋に好き嫌いは相反するものではなく、同時に存在できるものだと正人は理解した。それで自分は努力の甲斐あって、そこそこ好かれてはいるのだが、同時に嫌われている事も分かった。人に好かれるように気を使うのが嫌になったが、やめようとは思わなかった。好意が消えて悪意だけが残るような気がしたからだ。

 だが、高校二年の九月、正人に限界がきた。こんな生活はもう続けられないと嫌になり、学校を辞めたいと考えるようになった。しかし、ただ辞めると言えば親に止められるのは目に見えていたので、ずっと言い出せずにいた。

 ふとしたきっかけで同級生と殴り合った。何が理由でとも思い出せないぐらい些細なことが原因で、始めは向こうも殴り返してきたが最後は一方的に殴るだけになった。殴っている最中にこれで学校を辞められると正人は冷静に考えていた。男性の体育教師に後ろから腕ごと抱え上げられた時はこれで終わるのだと思って、顔には笑みが浮かんだ。

 しかし学校はただのケンカで処理しようとした。相手の親も問題にしようとはしなかった。三日も経つと誰もそのことを話さなくなり、殴った相手はまだ顔に青いあざが残っていたのに『俺が悪かった』と謝ってきた。

 正人は意味が分からなかった。理不尽で透明な物が学校を辞めさせないようにしている。もう一度殴ってやろうかと思ったが、さすがにそれはでやめた。

 結局は親に学校を辞めたいと言った。親がケンカに何か原因があるのかと一度訊いてきたので、正人がそれにうなずくと親は納得した。しかし、もっと根本的なところに原因があるような気がした。それが何かは正人にも分からない。ただ在るということが分かるだけだ。

 正人は高校を中退した。

 学校を辞めてからは何をするでもなく、ただ日々を過ごしたが、ある日叔父が家に来た。正人に用があるらしい。

 叔父はまず高校を中退してこれから先の人生をどうするのか訊いた。答えられるはずがないので正人は黙っていた。それから学校は辞めるにしても何かしなくてはならないと言った。他にも色々言われたが、どれももっともな事ばかりなので正人は黙っていた。

 言葉が一度途切れて、叔父が間を溜めた。今日はこれを言いにきたのだと正人には分かった。

 大工になれ、と叔父は言った。

 知り合いの父親が大工の親方をしていて、昔は弟子をとって修行させていたそうだ。その人の元で修行した大工はみんな業界では知る人ぞ知るという立派な職人になっている。だから大工になれということらしい。

 大学へ行く頭ではなかったが、大工がうまくやれるとも思えなかった。人がいれば結局良くない事が起きる。できれば人と関わり合いのない仕事がいい。それに今どき修行なんてとも思った。しかし断れるような雰囲気ではなく、正人はずっと黙っていた。

 しばらく誰も口を開かなかった。

 沈黙に堪えかねた叔父が「そうするぞ、大工になれ」と言葉をこぼした。正人はうなずくしかなかった。

 三週間後に叔父から電話があり、明日親方のところへ行くから学生服を用意しておけと言った。

 その日は一睡もできなかった。眠気を抱えたまま叔父の車に乗せられて大工の親方のところまで行った。眠れなかった事もそうだが、元々気乗りはしなかった。ふてくされていれば向こうからあきらめてくれるだろう。

 そこは倉庫と家が寄りそっている内にいつの間にか合体したような建物で『上原組』と看板がかかっていた。年代物の板だったが薄く湿った光を反射させていて、埃一つ付いていない。看板だけ見ればヤクザの事務所みたいだった。

 倉庫に入ると髪が全て真っ白になっている男が粗末な木製の椅子に手と足を組んで座っていた。どう見ても歳は取っているが体付きはしっかりしていて体中から生命力が溢れていた。

「そいつは駄目だ」

 叔父がまだ何も言っていないのに男はいきなりそんなことを言った。

「待ってください」と叔父が食い下がる。

「お願いします」「駄目だ」のやり取りが叔父と男の間で繰り返された。

 正人としては別に駄目なら駄目で構わないのだが、駄目だと言い続けている男にだんだん腹が立ってきた。大工に弟子入りするのは駄目になって欲しいが、叔父の頼みをはねつけるのは何故か許せなかった。

 男が正人に目を向けた。見下すような目が許せないと正人は思った。

「お前も駄目だと思っているだろう?」と男は正人に尋ねた。

「できます」と正人は答えていた。

「あ?」

 男が眉をひそめる。

「大工ぐらい俺にもできますよ。修行するまでもない。木を切って釘を打つだけだ」

「てめえにできるわけねえよ」

 男は叔父に対しては社交的な態度を見せていたが、正人が喋ると感情を露わにした。

「高校もロクに卒業できない根性無しに何ができる。おめえには何もできねえよ。親にも世間様にも迷惑だから、その辺でさっさと野垂れ死ね」

 男の一言一言が正人の腹を煮えたぎらせた。

「いやですね」

「嫌だぁ。そんなこと言えた義理か。この御時世に高校辞めるなんて聞いたことがねえ。きっと親も泣いてるだろうよ」

 男が床に唾を吐き捨てた。それは正人の足元に落ちた。

「泣かせていません」

「いい子ぶるこたあねえよ。おめえはとんでもねえ不良野郎だ。イキのいい奴ならまだ可愛げもあるが根性無しは救いようがねえ。俺んところでも面倒見きれねえや。あきらめてくれや、なっ、正木さん」

 男は最後に叔父へ言葉を向けた。叔父は言葉を返せずにうつむいている。

「俺はあんたの甥っ子が憎くてこんな事を言ってるんじゃねえ。人には向き不向きってもんがある。こいつは大工に向いてない。それだけです。さっきのは言葉の綾みたいなもんです。どうも学が無いもんで興奮すると変なことを口走っちまうようです。とにかく他を当たってください」

 叔父に話しかける時はやはり男の口調は変わっていた。そこに嘘の気配を感じて正人は腹が立った。

「てめえだって、そう思うだろう? 今どき親方に弟子入りって時代でもねえし、大工だってできそうにねえ。始めからそういう顔をしてたぞ」

 今度の男の口調は叔父に話しかけるように柔らかくなっていた。もうこれで話はまとまったという雰囲気を出している。勝手に終わらせるな。正人はまた腹が立った。

「できます」と正人は言った。目の前の男に対してできないと言いたくなかった。そんな言葉が返ってくると思わなかったのか、男が意外そうな顔をした。

「できますよ」

 正人は重ねて言った。怒っていた。それも冷静な怒りだ。同級生を殴っていた時に似ている。

「無理だ」「できます」何度も同じやり取りを繰り返した。

「くそっ、それじゃあ明日一度来てみろ。駄目だったら、あきらめろ、なっ」

 最後に男があきらめたように言った。男は疲れた顔を隠そうともしていない。目の前の男に対する微かな勝利感で正人は少し嬉しくなった。

 明日の朝六時に倉庫前に来いと言われ、その日は帰った。

 帰りの車の中で叔父は何も言わなかった。家に帰ると明日から親方のところで修行することになったと親に伝えて、すぐに帰った。

 両親は何も言わなかったが不安は伝わってきた。それとは反対に正人は興奮していた。絶対にできるとあの男に証明してやろうと怒っていた。それで自分が根性無しの救いようがない奴ではないと証明できれば、あの男を殺してやろうと考えていた。あの男は自分を侮辱した。その償いは命で払ってもらうつもりだ。ただし、ただ殺しただけではあの男が言ったように正真正銘のクズ野郎だ。あの男の言った事が間違いであった事を証明してから殺す。そう決めていた。




 新聞配達のバイクの音が聞こえると、正人は布団から飛び出した。

 冷蔵庫からハムとパンとマヨネーズを出して食べると、パジャマから学生服に着替えようとしたが、大工をするのに学生服は無いだろう。少し迷ってから古いTシャツとジーンズに着替えると正人は家を出た。

 昨日は叔父と一緒に車で行ったが、倉庫はそれほど遠い場所ではない。自転車で二〇分ほどのところにある。

 六時に来いと言われていたが、三十分早く倉庫に着いた。しかし倉庫前には三人の男が立っていた。父親と同じぐらいの歳で、一番若そうな男でも十歳は年上に見えた。彼らはダンプのそばで何か話していたが、正人が倉庫の脇に自転車を停めると、こちらに目を向けて何も喋らなくなった。正人は古い木材に腰かけて彼らと距離を置いた。

 六時になる前に昨日の男が家から出てきた。三人に短い挨拶をすると何かを言おうとして正人に気付き、本当に来るとは思わなかったという顔をした。それを見て正人は勝ったと思った。

 男は咳払いすると正人を手招きした。

「いきなりであれだが、今日から世話することになった坊主だ。よろしく頼む」

 男がそう言うと、三人がはっきりしない言葉で返事をした。

「自己紹介と挨拶をしろ」

 男が後ろに下がって、ぼそりと耳打ちした。

「おはようございます。正木正人です。趣味は釣り。好きな物は麻婆ナス。辛い物はだいたい好きです」

「てめえの好きなものなんか聞きたかねえよ。よろしくお願いしますだろうが」

 正人にだけ聞こえる声で男がつぶやいた。地面を蹴る音もした。頭の中が煮え立ったが、腹は立たなかった。絶対に殺してやるという気持ちをさらに強くしただけだ。

「よろしくお願いします」

 そう言った後で「頭も下げられねえか」とまたつぶやく声がしたので頭も下げた。

 男は下げた正人の肩に触れると、三人の男にも自己紹介をさせた。向こうはよろしくお願いしますとも言わなかったし、頭も下げなかった。

 自己紹介が終わると今日の仕事の段取りが話し合われたが、正人には何を言っているのかさっぱり分からなかった。それが終わると三人の男はダンプに乗った。

「お前はこっちに乗れ」

 男は正人を軽トラに乗せた。ダンプが前、軽トラが後ろになって現場へ向かう。

「あっちにいるのも、あんたの弟子?」

 黙っているのも気詰まりなので正人が口を開くと、男が力任せにクーラのパネルを叩いた。

「てめえ、さっきは見逃したが今度は許さねえぞ。口の利き方も知らねえか」

 男は前を向いたまま、荒い鼻息を吐きながらハンドルを強く握っていたが、その後に「俺の事は親方と呼べ」と小さく言葉を漏らした。

 正人は胸の中が揺れていて、しばらく口を利けなかったが黙っているうちに落ち着いてきた。それと同時にやはり殺してやろうという気持ちを新たにした。

「親方、あっちにいるのも弟子ですか?」

 赤信号で車が止まると正人はようやく口を開くことができた。

「前にいるのは応援の職人だ。さんを付けろよ。弟子じゃねえ」

「応援?」

 意味が分からなくて聞き返したが親方は答えなかった。応援と聞いて正人が思い浮かべたのは甲子園で選手達を応援するチアリーダー達で、前を走るダンプに乗っている男達とはどうしても繋がらなかった。

 現場に着くと三人の男と親方はすぐに荷物を降ろした。正人も荷台に乗っている物を降ろそうとすると「触るな」と親方に怒鳴られた。仕方がないので正人がダンプの荷台に近付くと、三人の男達も怒鳴りこそしなかったが咎めるような目を向けてきた。何もする事がないので正人は家の周りに組まれた足場に寄りかかると「サボるな」と親方の怒鳴り声が飛んできた。

 正人は手持ち無沙汰のまま、家からも軽トラからもダンプからも離れた場所に立っていた。

 荷を降ろし終えるとすぐに仕事が始まった。親方の指図で男達がダンプに乗せた柱をクレーンで上げて、木にはめ込んでいく。クレーンは最初から現場にあった。

 木には穴が掘ってあり、そこに柱を差し込むようになっていて、人の顔ほどもある木槌で柱を打ち込んでいる。正人はそれを見ているだけだった。最初に言われた事が、何もしないで見ていろだったのだ。本当に何もしないまま二時間が過ぎた。

 親方が一度足場から降りてきて、まだ打ち込んでいない柱の木の表面を撫でると、何か気に入らない事があったのか舌打ちした。

「おい、ちょっと来い」

 ようやく仕事か、と正人はすぐに向かった。

「これをあの台まで持っていくぞ」

 親方の指示で木を組んで作った台に柱の木を持っていく。木を置くと親方がまたさっきと同じように表面を撫でて舌打ちをした。

「触ってみろ」と親方が言った。

 正人は柱を撫でた。何か問題があるようには思えない。それどころか綺麗に切られた柱で、これ一本でどれぐらいの値段がするのかと正人は考えた。

「どうだ?」と親方に訊かれたが「何も」と答えるとまた舌打ちだった。

 親方は細長い木の箱のような道具を取り出すと、それを柱に置いて引いた。すると箱の中ほどにある穴から向こう側が透けて見えるほど薄い木の削りかすが出てきた。親方は体を後ろにずらしながら、木を端から端まで削っていく。削りかすは途中で途切れることなくするすると伸びて、丸まりながら地面に落ちた。

 親方は削った後の柱を一度撫でると何かを納得するように柱を撫でた。それからまた「触ってみろ」だ。さっきと同じように柱を撫でる。

「どうだ?」

「よく分かりません」

 正人がそう言うと親方が舌打ちをした。

「何かが違うということは分かりました」

 そう言い直すと、親方が一度口元を緩めそうになり、また思い直したように、きゅっと引き締まった。

「削った後でそんなこと言うんじゃねえ。それじゃあこの面は削らなきゃいけないかどうか言ってみろ」

 親方が柱のまだ削っていない面を叩いた。正人はそこを撫でる。つるつるしていて滑らかだった。

「削らなくてもいいんじゃないですか?」

 親方が柱の向こうに唾を吐いた。

「分かっちゃいねえ」

 親方は柱を台の上で転がすと、またさっきのように柱の表面を薄く削った。

「目をつぶって撫でてみろ」

 親方の言う通りに正人は目をつぶって撫でた。

「さっきと同じです」

 本当はどっちだか分からなかった。親方がまた唾を吐き捨てた。そのあと削った柱は四本。四面とも削ったので計十六面だが、親方はどれも同じように削る前後で正人に表面を撫でさせ、意見を訊いてきたが、良いと言っても悪いと言っても悪態をつかれた。

 削った後の柱は他の職人がクレーンの先についたワイヤーに括りつけて屋根の上に上げた。やはり見ていろとだけ言われた。

 途中で短い休憩と昼の長い休憩があったが、正人はずっと見ているだけだった。三時に一度何かすることはないですかと親方に尋ねたが、やはり何もしないで見ていろとだけ言われた。他の職人達も、何もしなくていい、と態度で示している。


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幽霊になった私 (牛野小雪season2)
牛野小雪
2016-04-28






【内容紹介】
最近友達ともうまくいっていない。勉強も難しくなってきた。

両親はしょっちゅうケンカしているし飼っていた猫はいなくなる。
あんまり色んな事がありすぎて私は近くの公園でちょっとロマンチックな自殺をしたんだけど気付いたら幽霊になっていた。
誰も私が見えないし声も聞こえない。鼻をつまんだって気付かない。
幽霊になっても何もできないからつまんないことばっかり。
いくら待っても天国からのお迎えも来ないし、地獄に落ちそうもない。
あ〜あ、私これからどうなっちゃうんだろう。

読んだことがある人はこちらへ→『幽霊になった私』に一言もの申したい!

私とタニス 1



 私がまだ小さい頃、両親はいつもケンカをしていました。私は二人の仲を取り持とうと、時には直接的に、時には間接的に陰謀めいた事もしましたが、二人はいつも私の試みをふいにするか、台無しにしてしまうのでした。そういうことが何度も続くと私はこの家にいるのが嫌になりました。

 ある日、学校の帰り道にある橋のたもとにダンボールが置かれていました。中を覗くと灰色の毛玉が入っていました。でもただの毛玉ではありません。もっとよく覗いてみると体を丸めた猫でした。

 猫は私に気付くと顔を上げて「ニャーン」と鳴くと、ダンボールのふちに前足をかけて何度も後ろ足をぴょこぴょこと蹴りました。その必死な姿を見ていると、この子を絶対ここに置いて行ってはいけないという気持ちが湧き起こって、私はその子を胸に抱いて家に帰りました。猫は私の胸の中に入るとすぐに目を閉じて寝息を立てました。まるで生まれた時から私の猫みたいです。

 家に帰った私は猫をクローゼットに入れて、お母さんに猫を飼いたくないか探りを入れました。しかし、私が「猫を飼いたくない?」と言った途端にお母さんの血がさあっと引いて部屋ごと寒くなりました。

 お母さんは物凄い勢いで私に怒鳴りました。私は体を小さく丸めて泣きました。後から後から涙があふれ出てきて、ずっと手で目を押さえていたのですが、頭上からお母さんの激しい声が降り続きました。

 お母さんはひとしきり感情を吐き出すと、今度は優しい声で「アキ、どうして猫を飼いたいなんて言ったの?」と訊いてきます。もしあの子の事を話すとお母さんはきっと捨ててきなさいと言うに違いありません。私は黙っていました。するとお母さんはまた激しい声になりました。

 お母さんは私を怒鳴り続けると死んだようにソファーで横になったので私は自分の部屋に逃げました。

 音を立てないようにクローゼットを開けると猫は静かに丸まっていましたが、私に気付くと飛ぶように駆け寄ってきたので私はその子を胸に抱いて頭を撫でてあげました。すると猫は体中を震わせてプルルルと気持ち良さそうな声を出しました。

 私はその子にアズキという名前を付けました。アズキはプルルルと喉を鳴らして微笑みました。私もその顔を見て気持ち良くなりました。

「私達ずっと一緒だよね?」

 私が心の中で問いかけると、アズキは「ニャオ」と答えました。その瞬間私とアズキは秘密の友達になりました。



 

私とタニス 2



 次の日、私が学校の図書室で猫の飼い方の本を読んでいるとナツミちゃんが「アキちゃん、猫飼うの?」と訊いてきました。ナツミちゃんは私の友達で幼稚園からずっと一緒です。私達はなっちゃん、アキちゃんと呼び合っていました。絶対に信頼できる女の子です。私は昨日アズキを拾ってお母さんに内緒で飼っている事を話しました。すると彼女はとてもうらやましがりました。

「家に来たらこっそりみせてあげる」と私は言いました。

 私とアズキとなっちゃんは三人でよく遊びました。家の中では音を立てないようにしました。外へ出た事もありました。アズキは外の世界に興味津々で、すぐにどこかへ姿を消してしまうのですが、私が「アズキ~」と呼ぶと必ずどこからか姿を現して飛ぶように私の足元に戻ってきました。

 私とアズキの関係は一ヶ月続きました。

 ある日、家に帰ってくるとお母さんが優しい顔で私を待っていたので嫌な予感がしました。こういう顔をしている時は激しいケンカの前触れなのです。私は顔を合わせないように、部屋へ逃げようとするとお母さんが言いました。

「アキ、お母さんに何か隠していない?」

 私は首を横に振りました。

「怒らないから言ってごらんなさい」

 私はぱっと顔を上げました。

 お母さんはきっとアズキの事を知っている。でも怒っていない。それどころか嬉しそうに微笑んでいます。私は全てが許されているのだと勘違いして、アズキの事を洗いざらい白状しました。

「他にない? 良い機会だからお母さんに秘密にしている事を全部話してみて」

 私は少し考えてみましたが、何も思い浮かびません。

「何も。これで全部」と私は答えました。

 その瞬間、お母さんの体から一斉に血の気が引いて氷に包まれたように冷たくなりました。

「何でお母さんに黙ってそんなことするの!」

 私はひどく怒られました。その時のお母さんの声は家をバラバラにしてしまいそうなほど激しい物で、私はとっても長く怒鳴られた後、泣きながらお母さんを自分の部屋に連れていくことになりました。

 どこかに隠れていて。そう願いましたが、私がクローゼットを開けるとアズキは私の足元へ飛んできました。でも私は後ろめたい気持ちがあったので、いつものように撫でてあげることができませんでした。アズキは何度も私の足首にひたいを擦り付けては、不思議そうな顔で私を見上げて「ニャーン」と鳴きました。

 お母さんは言いました。

「元のところに戻してきなさい」

 私は必死にアズキをこの家に置いてくれるように頼みました。もうわがままは言わない。勉強もする。お母さんの代わりに毎日晩ご飯を作ってもいい、一生のお願いだとか、色々言いましたが駄目でした。私はアズキと一緒に外へ出され、アズキを元の場所に戻すまで帰ってこなくていいと言われました。

 私はアズキを拾った橋まで行きました。アズキが入っていたダンボールはボロボロになっていましたが、まだ同じ場所にあります。そんな場所にアズキを戻せなかったので、私は優しい人にアズキを拾ってもらうことにしました。

 でも、こんな時に限って誰も橋を通りません。さらにその上、雨まで降ってきました。
 私はアズキと橋の下へ逃げました。ゴミがいっぱいで変な臭いがします。こんなところにアズキを置いても、きっと誰も来ないでしょう。

(どうしよう?)

 私が心の中でつぶやくと、アズキが「ニャーン」と答えました。

「どうしたらいいと思う?」

 言葉に出して問いかけてもアズキはやっぱり「ニャーン」としか答えません。

 私は泣きそうになりました。アズキは私の事を分かってくれるのに、私はアズキの事が分かってあげられない。それが悲しかったのです。

 まだきれいなダンボールを見つけると、私はそこにアズキを入れました。アズキは慌てて「ニャーン、ニャーン」と鳴きながら私にすがりつこうとしましたが、初めて会った時のようにダンボールのふちを乗り越えられませんでした。

 私はダンボールの中に手を伸ばして、アズキのおでこやアゴの下を指で撫でました。アズキも私の手をおでこで撫で返してきます。そうやってお互いに撫で合っているとアズキは眠くなってきたのか、ダンボールの中で丸くなって目をつぶりました。

「ごめんね」

 私は音を立てないようにその場を離れて、橋の下を出る前に一度だけ振り返りました。するとアズキはダンボールから出ていて、びっくりしたような大きな丸い目で私を見ていました。
「ごめん!」

 私はそう叫ぶと雨の中に飛び出して家まで走りました。アズキが追いかけてきていたらどうしようと何度も考えましたが一度も振り返りませんでした。

 私は玄関の前まで帰ってくるとやっと振り返りました。そこにアズキはいません。気が抜けたような寂しさと、ほんの少しの
安堵感

 私はアズキを捨てて安心した自分が嫌になりました。

私とタニス 3




 夕方から降り始めた雨は勢いを増して、家の屋根や窓を激しく叩いています。私は橋の下に置き去りにしたアズキの事を考えていました。あそこは大雨が降ると水に浸かってしまうのです。

 もしアズキが溺れていたらどうしよう。私は音を立てないように服を着替えると家を出ました。

 夜の町はとても恐かった事を憶えています。でも私はアズキを助けなければいけないと、気持ちを奮い立たせて夜の町を走りました。

 私が橋のたもとまで行くと、夕方から降った大雨で川の水は道に迫るほど水位が上がっていました。橋の下なんてとっくの昔に水の底です。私はその場に座り込みました。世界中の水が私の目を通して流れているのではないかと思うぐらい泣きました。

 どれほど泣いていたのか分からないぐらい泣いていると肩を叩かれました。私はお母さんだと思って、慌てて顔を上げると警察の人でした。

 これはきっと運命に違いない。神様が私に罪を償わせるために警察の人をここへ導いたのだと私は確信しました。

「おまわりさん、私を逮捕してください。とってもひどい事をしました」

 私はこの先の人生を一生牢屋で暮らす事を想像してまた泣きました。警察の人が私の名前やどこから来たのか尋ねてきましたが、大きな感情が体を突き上げていたので、私はただ泣くばかりで何も答えられませんでした。

 私はおまわりさんに抱き上げられてパトカーに乗せられると警察署に行きました。

 警察署のソファーに座らされても私はまだ泣いていて、一生このまま泣き続けるのだろうと思うぐらい泣き続けました。でも、どんなものでも終わりがあるもので、いつしか私は泣きやみました。きっと一生分の涙が出たに違いない。そう思ったものです。一生分泣いた私は机の前にあったオレンジジュースを飲みました。それから私がした事を警察の人に話しましたが、警察の人は私を励ますように笑っていて、とても逮捕されるような雰囲気ではありません。

 名前や住所を教えると警察の人が一度部屋を出て、しばらくするとお父さんが迎えに来ました。私は牢屋に入ることもなくお父さんの車に乗って、家に帰りました。

 家に帰るとお母さんはパジャマ姿の恰好のままソファーで死んだように横になっていましたが、私を見るなり飛ぶように立ち上がって、私の顔に平手打ちをしました。私は目の前が真っ暗になりました。母さんはまた倒れるようにソファーへ沈み込みました。

 顔半分がじんじん痺れていましたが私は一滴も涙を流しませんでした。やっぱり一生分の涙を使い切ったのでしょう。お父さんがパジャマに着替えてもう寝なさいと言うので私はその通りにしました。

 朝になると昨日の雨が嘘みたいに晴れました。私は朝ごはんを食べて服に着替えると、ランドセルを背負って橋の下へ行きました。雲ひとつ無い晴れた空と同じように、昨日水であふれていたのが嘘みたいに水が引いていました。

 私はアズキを探しました。どこも水に流されて猫どころかゴミ一つ見つかりません。

 私はその場にしゃがみこんで泣きそうになりました。昨日までの私ならきっと川のように泣いていたでしょう。でもやっぱり涙は出てきません。

 涙を出さずに泣いていた私の耳に川の音が入ってきました。川にはダンボールと同じ大きさの石が頭を出しています。私はわけもなくその石の下にアズキがいると感じました。

 私はランドセルを置いて、靴と靴下を脱いで川に入りました。そして、足首に水の冷たさを感じた瞬間、視界が真っ暗になり体中が暖かさに包まれました。何だか変だな、と目を開くと白い天井が見えました。すぐそばにお父さんとお母さんが不安そうな顔で立っています。二人の後ろに白衣を着た女の人が通ったので病院だと分かりました。

 後で聞かされた話によると、私は川で溺れていたところを助けられたそうです。水に足を着けた瞬間、ここへ来たのだから、とっても不思議でした。

 ランドセルは家に戻っていましたが、学校はしばらく休んでいいと両親は言いました。それと川で溺れていた事は誰にも言ってはいけないと釘を刺されました。


私とタニス 4



 次の日は、お母さんがつきっきりで私のそばにいました。近所の噂では、私が自分から川に落ちたということになっているそうです。

「絶対にそうじゃないでしょ?」

 お母さんは何度も訊いてきました。私はその度に「そうじゃない」とか「違う」とか答えました。そう答えて欲しそうだったからです。でも私はどうして川に入ったのか訊いてくれるのを待っていました。もし訊かれたら私はアズキの話をするつもりでしたが、お母さんは理由までは求めていませんでした。

 お母さんが部屋から出ると私は泣きました。もう涙なんて出ないと思っていたので、自分でも驚きました。寂しい気持ちになってアズキを抱きしめたくなりましたが、アズキはもういません。胸一杯に空洞が広がって、また涙が出ました。

 いつの間にか眠っていた私は母さんが呼ぶ声で目が覚めました。夕食の時間です。私が部屋を出ないでいるとお父さんが部屋に来たので「いらない」と答えました。

 お父さんが部屋のドアを開けたまま食卓へ戻ると夕食を食べる音が聞こえてきました。私は音を出さないようにベッドから出ると部屋のドアを閉めました。

 お母さんはお風呂に入る前に私の部屋に来て「ラップをしてあるから食べたい時に食べなさい」と言いましたが私はそれにも答えませんでした。

 次の日も、また次の日も、私は何も食べませんでした。このまま死んでアズキにごめんなさいと謝って、また一緒に暮らす事を考えていたのです。さらに次の日はお母さんが無理矢理私に食べさせましたが全部吐いてしまいました。

 次の日の夜、遠くに住んでいるおばあちゃんが家に来ました。おばあちゃんは私の部屋に来ましたが、無理に食べさせることはしませんでした。私はそれが嬉しくて自然と笑みが浮かびました。

 さらに次の日、朝早く起きた私は鏡で自分の顔を見ました。私は肉が落ちた顔を見て、もしかしたら今日死ぬかもしれないと思うと、顔が痛くなるぐらいの笑顔になりました。

 その日、お父さんとお母さんはどこかへ出かけました。おばあちゃんは私の様子を見に来ると「なにか欲しいものはない?」と訊いてきたので「何もいらない」と答えると、おばあちゃんは「そう」とだけ言って居間へ行きました。私はそっけなく扱ってくれたのが嬉しくてほんの少しだけ涙が出ました。

 昼にまたおばあちゃんが来て「私は食べるけどアキちゃんは何か食べたい物はある?」と訊いてきたので「何もいらない」と私は答えました。おばあちゃんはやっぱり私を放っておいてくれました。おばあちゃんが何かを食べている気配を感じると、胸がじーんと痺れてくすぐったいような気持ちになりました。

 両親が帰って来ました。たくさん買い物をしたようで車と家の間を何度も行き来しました。それからお母さんは今まで聞いた事がない優しい声で私を呼びました。

 部屋を出た時から浮き足立った気配を感じていました。私が居間に入ると、おばあちゃんが何かを抱いている背中が見えました。お母さんはわざと作った笑顔をしていて、お父さんは不安な顔をしています。おばあちゃんが振り返ると、一匹の猫が腕に抱かれていました。灰色の毛に黒のマーブル模様のある猫です。

「アキちゃん、猫、可愛いねえ、何て名前にする?」

 おばあちゃんの声を全部聞く前に、私は部屋に駆け込みました。体中が燃えるように熱くなって、私の心を猫で釣ろうとした両親にも、おばあちゃんにも、そしてまだ死なない私に怒っていました。

 きっと明日の太陽は見ないと決めて私はベッドに入りました。目をつぶっていると体が浮き上がるような感覚がありました。天国からのお迎えだろうと目を開けると、不思議な感覚は消えて私はベッドに戻っていました。目を開けていると天国にはいけないんだ。そう考えて強く目をつぶりましたが、体が浮き上がるたびに目を開いてしまったので私は何度もベッドに戻ってきました。そうこうするうちに夜の十二時が過ぎてしまいます。

 今日も死ねないと私は思いました。もしかすると永遠に死ぬ事ができないのではと考えると恐くなりました。

 ベッドで震えているうちに朝が来ました。待っているだけでは駄目だ。川に身を投げて死のう。私がドアを開けると、何かが私の足元を通り抜けて部屋に入ってきました。その影は部屋の真ん中で立ち止まると、私に振り向いて「ニャー」と鳴きました。昨日の猫です。

 私は窓を開くと猫を屋根に下ろして窓を閉めました。それから服を着替えて外へ出ようとすると、両親が起き出す気配がしたので私はまたドアのそばで息を潜めました。

 お父さんが家を出て、次にお母さんが出ます。おばあちゃんはまだ家にいますが、なんとかごまかせるだろうとドアノブに手をかけると、お母さんが慌てて家に帰ってくる音がしました。

 お母さんは私の部屋に真っ直ぐ向かってきました。私はドアノブをしっかり両手で抑えましたが、ずっと何も食べていなかったので力は入らないし、体は軽いしで、私はドアと一緒に開けられてしまいました。

 お母さんは凄い目をしてドアノブにぶら下がっている私を見ると、私の顔に平手打ちをしました。

「命を粗末にするんじゃないの!」と怒鳴ります。

私はアズキを思い出して涙を流しました。

「ああ、あんなところにいて。どうしよう」

 お母さんは窓の外を見て慌てました。それから「ハシゴ、ハシゴ」と慌てながら物置へ向かいます。
 私も窓の外を見ました。屋根のふちで私がさっき外に出した猫が小さくなって震えています。私はとってもひどいことをしてしまったと気付きました。

「おいで。そっちは危ないからこっちへおいで。お願い。こっちへきて」

 私は猫に声をかけました。その子は一度屋根の下に目を向けると、足を震わせながら私の方へ一歩踏み出し、それからまたもう一歩踏み出すと、何かから逃げるように私の手元へ飛び込んできました。私はその子を胸に抱き上げると「ごめんね、ごめんね」と何度も謝りました。もう涙なんか出ないと思っていたのに、また川のように涙が止まらなくなりました。猫は「ニャーニャー」と鳴いて、私の涙をなめてくれました。

 私はその子と一緒に部屋を出ると冷蔵庫にあった私の夕食を一気に食べました。久しぶりに物を食べたせいか、お腹がチクチク痛みましたが、私は頑張って全部食べました。

 新しい猫は灰色の毛に黒のマーブル模様が入っていました。灰色の部分はアズキと同じ色で、顔も一緒、アズキがおめかしをして帰ってきたみたいです。でも、私はその子にタニスという名前を付けました。アズキはアズキであって、タニスはタニスなのです。アズキの代わりではありません。

 私とタニスは公然の友達になりました。私が学校から帰ってくるとタニスは玄関で待っていて、ドアを開けると私の足元めがけて突進してきます。私達はどこでも一緒で、お風呂やトイレも一緒に入りました。

 タニスが来てから私は生きているのが楽しくなりました。でも、良いことはそれだけではありませんでした。タニスが家に来てからお母さんは優しくなりました。お父さんも早く家に帰ってくるようになって、二人はケンカすることもなく一緒にいても仲良くしています。

 その年は家族全員で北海道へ行きました。本当はハワイの予定でしたがタニスを連れて行けないので、猫と一緒に泊まれる旅館がある北海道へ行くことにしたのです。

 私とタニスは永遠の友達。眠る時も一緒。タニスが来てから全てがうまくいくようになりました。

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ヒッチハイク!: 正木忠則君のケース (牛野小雪season2)
牛野小雪
2015-08-09

僕は8月までだらだらと自堕落な夏休みを過ごすと郊外のコンビニに向かった。
道々に出会う日常では出会うことができない人や物事。世界の裏側。
たった一人の無謀な冒険。真夏の地獄巡りが始まる。

読んだことがある人はこちらへ→『ヒッチハイク!』に一言もの申したい!

1 ヒッチハイク



 僕の夏休みの第一日目は一日中眠ることだった。夜中の2時まで何をするでもなく、TVをつけたままマンガを読んだり、ネットを見たりして、意識の限界まで起きていた。

 たいていは朝7時に目が覚めて、そこからもう一度眠ると10時に目覚めて、さらにまた眠ると昼の2時になった。その頃になってようやく僕は布団から出た。

 朝から晩まで暑い日が続くので、火を使う料理を作る気にはなれなかった。電子レンジでうどんを温めて、水で洗い、麺つゆと、ねぎと、天かすを入れたぶっかけうどんを二杯食べた。そしてまた眠った。

 そうやって寝て起きての生活を三日続けると、体重が2キロ落ちた。僕は布団の上で、あくびをしながら体を大きく伸ばすと、また眠った。

 こうして一週間が過ぎた。僕はパンパンに膨らんだバッグを持って部屋を出た。徳島の実家に帰るのだ。

 僕が向かったのは空港でもバスターミナルでもなく郊外にあるコンビニだった。僕は緊張をほぐすためにコーラを一本買って飲んだ。それからコンビニの窓ガラスの出っ張りに腰を降ろして、気持ちが浮かれている人を探した。

 5分ほど待っていると本日一人目の浮かれている人を発見した。僕は腰を上げて、その人に話しかけた。目の奥の筋肉を広げて、口には笑みを。

「すみません、どこまで行くんですか?」

 男は赤の細いストライプが入った白のポロシャツにベージュのスラックスを履いていた。車の助手席から旅のにおいがしている。

「えっ、何ですか?」

 男はそう答えた。見ず知らずの相手に質問をされて素直に行き先を答える人がどこにいるのだろうか? そう思うのは世界を知らない人だ。僕の目の前にいる男は、そのすぐ後に「上野まで行くんだけど?」と疑問系で答えてくれた。

 意訳すると『僕は上野まで行くんだけど、一体何の用かね?』ということだ。上野という答えで、僕にとって彼は用無しとなったわけだが、粗末に扱うことはしない。アフターケアはどんな世界でも重要だ。

「ヒッチハイクをしているんです。徳島まで行きたくて」と僕は答えた。

「へぇ、ヒッチハイク! 徳島?」

「四国の」

 僕がそう言い足すと「あ~……」と男は間の抜けた声を出して空を見上げると「あぁ」と何かを納得したようにはっきりと声を出した。

 僕には彼の頭の中が透けて見えるようだった。徳島と言って、そのまま通じることはほとんどない。そのあとに四国と言い足すと、香川……愛媛……高知……あとひとつなんだっけ。あぁ、目の前いるこいつが言っていた徳島か、という風に思い出してくれる。

「すまないけど、上野に行った後は日本橋のホテルに泊まるから。仕方ないね。ごめん」

 男は申し訳なさそうに頭を下げた。

「いえ、こちらこそすみません。ご迷惑をかけてしまって」と僕も頭を下げる。

「ヒッチハイクなんて本当にあるんだ。徳島まで遠いけどがんばって」

「はいがんばります。ありがとうございました」

 僕は丁寧に言葉を重ねて、もう一度頭を下げると彼を見送った。彼はコンビニに入って、ペットボトルのジュースを買うと、僕に笑顔を向けて車に乗り、駐車場を出て行った。


 東京は大した街だ。東京でできないことは東京以外の場所へ行くことだけだ。東京の外から人は入ってくるが出て行く人は少ない。東京にいる99%の人は東京に用がある。ヒッチハイクで一番難しいのは東京を出ることだった。

 僕はコンビニの窓の出っ張りに一時間座り、20人の浮かれた人達に話しかけた。20人とも東京のどこそこへ行くと言い、ヒッチハイクをしていると驚いて、徳島と言って通じた人は一人もいなかった。

 僕はまたコーラを買って飲んだ。そしてまた窓の出っ張りに腰を下ろすとホンダの黒い軽が駐車場に入ってきた。出てきたのは白い半袖の男で、顔が半分隠れる巨大なサングラスをかけていた。口はむすっとしているが気持ちは浮ついている。ここではないどこか遠い場所へ行こうとしていた。

 僕はコーラを一口喉に流し込むと腰を上げて彼に話しかけた。

「すみません。これからどこへ行かれるのですか?」

「えっ、俺に言ってるの?」と男は言い、続けて「帰るんだよ」と付け加えた。

「どちらまで?」

「福島」

 やった。ついに東京を出る人を見つけた。

「もし良ければ一緒に乗せていってもらえませんか」と僕は言った。

「どうして?」

「ヒッチハイクで徳島まで帰ろうとしているんです。実家がそこなんですよ。お盆までに帰ろうと思って」

「あぁ」

 彼の「あぁ」は珍しく徳島がどこにあるのか知っている「あぁ」だった。

「それは遠いね。どうしてヒッチハイクを? お金がないとか?」

「そういうわけでもないんですが」

「若さの冒険というわけか。俺もしてみたかったな、そういう旅」

 そう言った彼も僕と歳はそう違わないように見えた。

「でも、福島と徳島じゃ全然方向が違うよ。北と西だ」

「とりあえず東京を出たいんですよ。ここにいると人の流れがぐるぐる回っていますから。福島も徳島も東京を出ないと行けないでしょう?」

「まあ、乗りなよ。でも俺は福島に行くよ。福島ってどこにあるか知ってる?」と男は言った。

「ありがとうございます。知っています」と僕は頭を下げた。とりあえず東京を出ることができれば第一関門突破だ。僕と彼は一緒にホンダの黒い軽に乗り、東京を出ることにした。



2 初めてのヒッチハイク



 大学一年生のある日、僕は駅の改札で財布がないことに気付いた。おまけに携帯電話もなくて人生終わったと思った。

 ぼくは気を取り直して地面をなめるように探しながら大学まで戻り、携帯電話を見つけた。しかし財布は見つからなかった。財布には電車の定期券が入っていたので僕は大学から歩いて帰らなければならなくなった。

 真夏のアスファルトを歩くと喉が渇いた。僕は通りかかった公園の水道で水を飲んで、日陰のベンチで一休みした。

 涼しい風に当たって再び歩き始めると、体が冷えて固くなっていたので、ううんと、うなりながら手や胸を横に伸ばした。すると一台の車がそばに止まった。スバルのインプレッサだ。

「どこまで行くんですか?」

 車には二人の若い男が乗っていて、助手席の男が窓から僕に話しかけてきた。僕は呆気に取られたが、馬鹿正直にアパートがある場所を答えていた。

「それって東京じゃないですか? それもすぐそこ」

 助手席の男が言ったので僕はうなずいた。

「まぁ、いいや。乗っていきなよ」

 僕はそれほど考えもせずに後部座席に乗り込んだ。僕は木刀を毎日二千回振っていて、人を見ると勝てるかどうかを値踏みする習性がある。僕はその二人を相手にしても勝つ自信があったので危険は感じなかった。

 二人は高校の同級生で、北海道から日本一周の旅をしている最中だった。その間に青森でヒッチハイカーを乗せ、三日間一緒に旅をして宮城の気仙沼で降ろし、宮城の岩沼辺りでまたヒッチハイカーを拾い、やはり三日間一緒に旅をして東京の日本橋で降ろしたそうだ。二人は僕が体を伸ばしているのを見て、ヒッチハイクをしていると勘違いしたらしい。

 東京はもんじゃ焼きよりナポリタンを食べる方がいいと教えてあげると、夜も近いのでナポリタンを出す店に行くことになった。

 僕は車に乗せてくれたお礼にナポリタンとグラタンを奢ると言っていたのだが、お金を払う時になって財布を落としていた事を思い出した。僕が「ごめん」と謝ると、二人は笑って、そこの代金を払ってくれた。

 二人は僕に借りだけを残して去った。名前はまだ憶えている。北海道の本田アキラ君と豊田スバル君、たぶん一生会うことはないだろうけれど、この恩はいつまでも忘れない。


 僕は偶然ヒッチハイクをして以来、世界の裏技を見つけてしまったと興奮していた。僕は見ず知らずの人を引っ掛ける奇妙な魅力に囚われてしまった。

 初めは伊豆の修善寺まで行った。夏目漱石がどうとかを本で読んで興味があった。

 実は人生初の意識的なヒッチハイクは失敗から始まった。どうせやるなら交通量の多い道路が良いだろうと、車がびゅんびゅん走る国道で半日立っていたのだが、車は一台も止まらなかった。

 いや、本当は三台停まった。でも三台ともタクシーだった。タクシーの運転手は僕がヒッチハイカーだと分かると三人とも舌打ちをして走り去った。

 車が目の前を通り過ぎていく度に僕は泣きたい気持ちに襲われた。昼前には心の限界に達して、部屋に戻ると涙を流した。

 二日目は知恵を絞って、ダンボールに『静岡 伊豆 修善寺まで』と書いて掲げた。すると車の通りが少なくなった時に車が停まった。人生初のヒッチハイク成功。この時はたまたまその人が伊豆へ行く予定だったが、僕は車さえ停まってくれれば必ず行き先まで乗せていってくれるものだという考えを再びヒッチハイクをする時まで抱いていた。

 初めてのヒッチハイクが成功して僕は自信が付いた。それで夏休みは東京から徳島までヒッチハイクで帰ってやろうという野望を抱いた。


 ……という話を福島に着くまでの間に話した。運転手の男はサングラス越しで表情は分からないが楽しんでいるようには感じた。

「それじゃ、これが人生初のヒッチハイク? 徳島へ帰るまでの」と男は言った。

「いえ、今は三年生だから三回目です」

「ふぅん、面白い事をするんだね。俺もやってみたいよ」

 限りなく100%に近い確率で彼はやらないだろう。

 僕は郡山で降ろしてもらい、男に礼を言った。

「泊まるところはある?」と男は言った。

「その辺で寝ます。夏だから」

「若いね」

「そっちもまだ若いですよ」

「そうかな」

 男がサングラスを外した。サングラス詐欺だ。男はどう甘く見積もっても30は越えていた。40代でも通じるかもしれない。大きなサングラスとヒゲの薄さが年齢を隠していた。

「20代でも通じますよ」

 僕は最後にお世辞を言って、そそくさと別れた。彼は嬉しそうな顔で僕を見送ってくれた。

 もう夕方になっていた。僕はイニシャルMのハンバーガー屋に入って、照り焼きバーガー二つと烏龍茶を夕食にすると、人気の少なそうな公園を探した。

 公園はすぐに見つかった。僕は公園の芝生にバスタオルを敷いて寝転がるとバッグを枕にして眠った。


3 そろそろ西へ



 僕は公園の水道で服を洗って乾かすとヒッチハイクを始めた。

『とにかく西へ』

 そう書いた紙を持って半時間ほど道路に立っていると中型トラックが止まった。僕は助手席に乗り込んで配送ルートに乗っけてもらった。

 ヒッチハイクの初心者が陥りやすい罠はトラックの運転手はみんな気が良いやつらでヒッチハイカーを乗せてくれるはずだという思い込みだ。その思い込みは半分当たって、半分外れている。

 トラックの運転手はみんな気が良いやつらというのは正解だ。しかしヒッチハイカーを乗せれば配送が遅れるし、事故でもしたら保健やら何やらがあるので、たいていの会社はヒッチハイカーを乗せることを禁止している。何故僕がそれを知っているのかというとトラックの運転手が教えてくれたからだ。

 その運転手はどうして僕を乗せてくれたのか。会社に対する嫌がらせだそうだ。僕はそれ以来、気の立っているトラック運転手を見ると声をかけている。すると彼らは会社に対する嫌がらせのために僕を乗せてくれた。僕はトラックに乗れるし、彼らは会社に鬱憤を晴らせる。Win-Winの関係だ。

 トラックが運んでいたのはラーメンの麺で、昼になると運転手がラーメン屋で喜多方ラーメンを奢ってくれた。
 そのあと僕達はラーメンの店を何軒か回った後に、会津に行った。もう夕方が近くなっていたので、車の通りが良さそうな場所で彼は降ろしてくれた。



 白虎隊が永眠する場所で僕は一夜を過ごした。静かな場所だったせいか良く眠れた気がする。僕は本気で霊を信じている方ではないが、そのまま立ち去るのは気が引けて、白虎隊のお墓に手を合わせながら、今日も良い車がひっかかるように手を貸してくださいと祈った。

 服を水で洗って乾かしている間に、僕は近くの定食屋でサバ定食を食べた。普段は皮を食べないが、旅先だと食べてしまうのは不思議だ。みそ汁に入っていたワカメの茎もぽりぽりと食べてしまう。

 腹ごしらえを済ませて、服の乾き具合を確かめると、まだ半乾きだったので近くにあるサザエ堂に登った。誰ともすれ違わずに上り下りできるという触れ込みだったが、僕一人だけだったので誰ともすれ違わなかった。

 太陽が空の高い場所に登ると人が増えて観光地らしくなった。でも浮かれている人は少なかった。次の行き先で頭がいっぱいなのだろう。僕は誰にも話しかけられずに日陰で人の流れを追っていたが、その中にヒヤリとする空気を持った人が現れた。

 その人は髪が全部真っ白で、腕は僕の半分もない細さだったが、明らかに僕より強いと悟らせる雰囲気を放っていた。もし竹刀を持っていたとしても僕は打ち込めないだろう。

 その人は真っ直ぐ僕に向かってきた。殺されるかもしれないと感じて、僕は逃げようとしたが、まさかこんな場所で切られることもあるまいと思い直して、じっと座り続けていた。

 すると彼は僕のそばまで来て、手刀で僕の頭を軽く打ち「常在戦場!」と小さく一喝してから話しかけてきた。

「何をされているのですか?」

「あなたこそいきなり何をするんですか」と僕は言った。いきなりのことで全身の血がドクドクと音を立てている。

「一応の勝負は着けないと思いまして。あなた、もしかして武道の経験がおありではございませんか?」
「えっ、ああ……高校まで剣道をしていました」

「道理で。お若いのに熱心ですな。私はいつ切りつけられるのかとヒヤヒヤしておりました。最近はどうもスポルツの気が多くて、常在戦場という言葉は薄っぺらい物になりました。なかなか見どころのあるお方だったので、私もつい手が出てしまいました。申し訳ない」

 老人は綺麗な角度で頭を下げた。美しい身のこなしに僕は仕返しに頭を叩いてやろうという気が失せてしまった。

「ところで何をされているのですか?」

 また最初の質問に戻った。

「ヒッチハイクで旅をしているんですよ」と僕は答えた。

「ヒッチハイク?」

 老人はヒッチハイクの意味が分からないようだった。

「えーと、ですね。道路で親指を立てて、いや、立てないこともあるから、う~んと、話しかけることもあるんですよ」と僕もなかなか説明することは難しかった。色々と言葉を重ねたあげく、結局最後に「要は車に乗せていってもらうということです」と僕は言った。

「世の中色んな人がいるものですな」と老人は言った。いきなり手刀で頭を叩いてくる人もなかなかいませんよ、という言葉は胸にしまい込んだ。

「どこまで行かれるのですか?」と老人が言った。

「目的地は徳島ですが、とりあえずは西へ」

「新潟まで?」

「通ることにはなるでしょうね。それからずんずん西へ行って……まぁ何とかなるでしょう」

「私は新潟から来ました」

「そうなんですか」

「今日はもう帰りますから、乗せていってあげましょう」

 いきなり手刀で頭を叩かれて、僕は躊躇したが、結局は「ありがとうございます」と礼を言った。その時うかつにも頭を下げたのだが、また手刀が降ってくるかもしれないと思い直して、僕は慌てて頭を上げた。老人はニッコリと笑っていた。

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真論君家の猫 上&下 (牛野小雪season1)
牛野小雪
2014-08-30







【内容紹介】
クロスケは金目の黒猫。母上や兄弟達と違って頭から爪先まで黒い。
とある四角い部屋をこの世の全てにして暮らしていたが、
ある日兄弟が一匹、二匹と部屋の外へ連れ出されて帰ってこなくなった。
そして、とうとうクロスケの番がやってくる。
ダンボールに詰められてやってきたのは、天井が見えない青天井の世界。
その世界にフタをしたのは真論君の顔であった。クロスケは彼に一目惚れする。
真論君に拾われたクロスケは真論君家の猫となり、名前はミータンに変わる。
首には赤い首輪が付いた。エサは毎日くれる。カツオブシはケチり気味のようだ。
だがこれも何かの縁なのでクロスケは真論君家の猫として生きることにした。

読んだことがる人はこちらへ→『真論君家の猫』に一言もの申したい!

1 ぼくはミータン


1 最初の主さん


 始めは全てが真っ暗だった。ぼくが柔らかく暖かい空間でくつろいでいると、時々体が揺れて柔らかい物にぐにゃりとぶつかった。それを何度か繰り返していると、同じ空間に何者かがいることに気付いた。それも一つや二つではない。時を追うごとにその存在は大きくなり、ぼくを押しのけようとするので、ぼくの方でも押し返した。


 そうやって誰もが押すな押すなの縄張り争いをしていると、やがて一つの存在がその空間から姿を消した。あぁ良かった、これで広くなった、と胸をなでおろすと、また一つの存在が消えた。それが何度も続いた。


 ぼく以外の存在がこの世から消えると、心地良い空間を独り占めにして、この世の春を楽しんでいたのだが、目の前にひとつの光が見えた。


 その光はどんどん大きくなり、頭の中までまぶしくなった。訳の分からない状況と身を包む寒さに震えていると、暖かくて柔らかいものがぼくの背中を撫でた。それは母上の舌だったが、この時はまだ目が開いていなかったので、それが何だか分からなかった。


 生まれたてのぼくは「にゃあ」と鳴けずに「みー」と鳴いた。ぼくの周りでも「みーみー」と大合唱が起きていた。先に生まれた兄弟達がぼくと同じように「みーみー」鳴いていたのだ。ぼくも「みーみー」の合唱に加わった。


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グッドライフ高崎望 (牛野小雪season1)

【内容紹介】
高崎望は14歳の秋に学校へ行けなくなった。

幸いにも担任の先生の尽力により高校に進学するが、
彼が入った上等高校は不良が集まる危険な学校だった。

読んだことがある人はこちらへ→『グッドライフ高崎望』に一言もの申したい!

1 上等高校受験



「望君は、やればできる子だからがんばって!」


 車の中から母親が声をかけた。息子の合格を心から信じている目をしていた。どうしてそこまで信用できるのか望には分からなかった。


 二人は上等高校の正門前にいた。今日は入学試験日で、門内には親子連れの学生が何人もいたが、望は一人だけだった。


 母親は一緒に行くと、何度も言っていたが、中三にもなって母親と一緒に歩くなんて恥かしいと望は思っていた。『来たら殺す』と望は言い続けて、三日前に渋々という感じで母親はついてくるのをやめた。他の子もそうしているだろうと思っていたが、みんな親子連れで子ども一人の方が珍しいぐらいだった。


 望と同じ学校の制服を着た子が何人かいた。顔は知っていたが名前は知らなかった。数人で固まって話をしている。


 校舎の門が開いた。


「試験を受ける方はこちらへ! 保護者の方はあちらへ!」


 スーツを着た男が白い息を吐きながら大声を出した。たぶんこの学校の教師だろう。
 望が校舎へ向かっていると担任の先生が自分の生徒達の肩を叩いて言葉をかけていた。望は先生に捕まらないように、そっと通り過ぎようとしたが肩を捕まれてしまった。顔を横に向けると先生と目が合った。


「高崎、がんばれよ」


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 白い大鳴門橋のすぐ脇で渦潮が白く渦を巻いている。実際にこの目で見る渦潮は想像していたよりも小さくて静かだった。


 秀子は展望台から渦潮を見下ろしていた。隣には奈津美がいる。彼女の提案でここまで来たが、すぐに飽きてしまったようだ。


「何もないね」と奈津美がだるそうに言った。「私の想像していた渦潮ってもっとこう大きくて激しいものだと思っていたけど、こうやって見ると大したことない。子どもの頃に見たのはもっと大きくて恐かったんだけどなあ」


 奈津美は手を大きく広げた。



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「私達って女として終わってない?」と恵は言った。目の前には玲美と一子が座っている。四角いテーブルには、なめろうと一升瓶が置かれていた。


「普通、女が三人集まったらさ。間接照明のおしゃれなお店でワインをたしなみながら、ナイフとフォークで食べるような料理を食べて、上品におしゃべりするんじゃない?」と恵は言った。


 玲美と一子は顔を真っ赤にして、歯を見せながらにやにやしている。お酒が完全にまわっている証拠だ。


「そういうのは夜遊びに慣れていない子が背伸びしてやるもんでしょ。私達ぐらいになるとそういう堅苦しいことはやめて楽しくやるの」と玲美は言った。



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