アキレスと亀
 9月にそろそろ終わりそうだと思っていたのに、終わり間際に色んなことを思いついていたのでアキレスと亀みたいに、そろそろ終わりそうだ、のまま10月まで伸びていった。ただしパラドックスは起きなかったので、先週に仮書きを終えた。164ページ。約4ヶ月。のべ平均すると1.3ページ/日。亀みたいな遅さだ。最後のページにはいつも通り『これ以外を書け!』と記した。めんどくせ~!と心が叫んだ。仮書きをそのままwordに打ち込んでしまいたい気分だ。最初から最後まで仮書きをしたのはこれが初めてで、もう小説を一冊書いたような虚脱感がある。こんなことなら目前の3~4千字を仮書きしながら執筆すれば良かった。

 今回の小説はある限られた空間で、心と心との繋がりを書く予定だったが、そっちはボツにしたものが多く、これだとseason3の書き方で長編を書くという目標は無理かなと思っていたが、主人公が道を歩き始めた時から筆がノり始めた。何だかいつも道を歩いてるな、と思うけれど、何故かそうなってしまうのだから仕方がない。当初の予定では60か70ぐらいで仮書きを終えるはずが、道を歩き始めてから100ページも書いてしまった。目論見どおりなのは3分の1までで、そこから先は道を走ったり歩いたりしている。そういえば60ページ以前も筆がノッているのはサブプロットの主人公が道を歩いているところだ。きっと道は私の小説にとってアキレス腱なのだな。誰かがどこかにいるところは削っても大丈夫だが、道を歩いているところを削ると小説が成立しない。『生存回路 』だって究極の話をすれば河童の部分を丸々削っても良い気がする。そう考えると執筆前に引き直すプロットは最初から道を歩かせていた方が良いのかな。でも何で道なんだろう。私にも分からない。もし私がベケットだったなら『ゴドーを待ちながら 』ではなく『後藤を捕まえろ』を書いていたに違いない。

 これから先のことを考えるとゾッとするほど長くて、こんなの書くのは無理って投げ出したくなるけれど、とりあえずプロットラインを引き直して、冒頭3、4千字を仮書きするところから始めてみよう。どんなことでも細切れにして一つずつこなしていけば何とかなるものだ。仮書きだって1日で164ページも書いたわけじゃない。1日1ページと思えば楽なものだ。10月中には1章ぐらい書き終わっているといいな。

(おわり)