ジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード』という小説がある。映画にもなっている。『オン・ザ・ロード』の結末は、メキシコで分かれたディーンの噂を聞きつけたサルがニューヨークの路地を探し回り、ボロボロになったディーンを見つける。あんまりにひどいんで涙が出そうになる。ディーンは最初サルだと分からなくて物乞いをするんだけど、途中でサルだと気付いて今のはジョークだと恥ずかしがる。気まずい沈黙の中、海岸へ行こうとなり、お互いにどうしているのか話し合って、二人の距離がもう二度と交わらないほど離れてしまっていてサルは寂しくなる。でも、サルはディーンに「西部へ行こう」と言う。絶対に辿り着けないと確信しているけれど、そう言わざるを得なくなる。ディーンは「いつ?」と目を大きくする。「今から」「そうこなくっちゃ」ディーンが缶ビールを一気飲みする。それが致命的な一撃になってディーンの心臓が止まる。それでなんだかんだあって、最後はサルがディーン・モリアーティのことを思い出しているところで終わる。

『オン・ザ・ロード』を憶えている人なら、これが間違いだと分かるだろう。でも、つい最近までこういう終わり方だと思い込んでいた。それで映画の方を見たら全然結末が違っていて(監督の勝手なクリエイティブなんかいらないんだよ!)と憤って、むしゃくしゃして小説の方を読むと、映画と同じ終わり方だったのでビックリした。もしかして世界線変わってない?

 誰もが知っている○○の結末は意外とみんな知らない。というのをTVでやっている。私も分からないやつが結構ある。結末は大事なものだと言われているが、案外みんな忘れてしまっている。というより別のストーリを作り上げてしまっている。それじゃあ最後なんか、もうめちゃくちゃになって、どうしようもないエンドでもいいんじゃないかって気がするけれど、そこまで強気になれなくて悩んでいる。

 もちろん冒頭も悩む。小説の冒頭を集めた本があるぐらい冒頭は大事だと言われている。でも『妄想の戦争の話をしよう』は”ウンコ爆弾が戦争の始まりだった”で始まる。その次は濃縮ウンコが出てくる。こんな汚い始まり方で良いんだろうかと最初は不安だったが、何度も、うんこ、うんこ、の文字列を読んでいると、本来の意味のうんこから意味が離脱して、うんこという純粋な三文字の存在になってくるから、うんこ? ふ~ん。ぐらいの気持ちになる。感覚マヒしている?

 しかし、ノートや雑感帳をつけなければ、わりと分かりやすい話になるんだなと思った。短編だから、さっと書けてしまったんだろうか。もうひとひねり欲しいけれど、短編でも冗長さがあるって言われたから、むしろこれぐらいが良かったりして。


 余談だが、王木さんのnoteに小説が掲載されているのを呼んでびっくりした。

 サインカーブに浮かぶ日①|王木亡一朗 / note 
 https://note.mu/oukibouichirou/n/n3d5672b8b00a
 
 前もnoteに掲載していたレモン/グラスにびっくりしたが、あれ以来の衝撃。考えてみればもう3年前で、そりゃ新しいものを書いてくるなぁ、もう3年も前かぁ、と色々考えた。去年から新しい小説を書くんだ、と意気込んでいるが、そんなことを考えているのは私1人じゃない。いいね、いいね、わくわくする。この小説か、この次が、たぶんめっちゃくちゃ凄いのになる。間違いない。っていうか、もうすでにめちゃなやつを書いていて懐に隠し持っていると予想している。

 あ、そうだ。質問箱で、最近書いていないんだけど、どうしたんですか、と聞かれて、どうやらtwitterは見ていてもブログは見ていない人がいるのだと知った。基本的に情報発信はブログメインでtwitterは記事更新と読んだ本のツイートぐらいにしか使っていないんだけど(読んだ本を最近つぶやいているのはtwitter放置問題の解決のため。質問箱もそう)、twitterだけで完結するような情報発信も考えた方がいいのかも。

とはいえkindleでもう一年以上出版していないのも事実。今年はきっと出しますよ。凄いのが出ます。

どれくらい凄いかというと、これぐらい↓

すごいkindle

というわけで、今年の牛野小雪は要チェックです。よろしくお願いします。

(おわり)

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