推薦文『未来劇剣浪漫譚 Human Possibility』

 退廃的な未来で巻き起こるSF剣豪小説2作目

 今回は作者が商品紹介に書いてある通りにエンタメの要素を強く打ち出していて前作と比べてかなり読みやすいです。また続編なので登場人物や世界観が共通していて、早い段階から物語に入り込めます。

 前作で元々一般人だった凛が姉の仇討ちとはいえ人を殺したのに、ちょっと明るい雰囲気で終わったのが少し気になった。
 しかし、今作では人殺しの代償として一般人の友子から拒絶されていたという展開が待っている。
 凛がどうやってその傷を乗り越えるのかが一つのよみどころ。

 もう一つは無二さんが天心流の心構えを会得できるかどうか。
 師匠お墨付きで天心流の技を極めた無二さん。前作では余裕のある強さで負ける姿を想像できない男だったが、今回はそんな無二さんでも勝てそうにない相手が出てくる。(ついでに言うと嫌な奴だ)
 その相手に勝つには全てを捨てて天心流の心で立ち向かうことなのだが、それができないといういかにも剣豪小説的な展開がよみどころ。

 読み終わってから、いや後半辺りでずるいっ!と思った。この時から続編を匂わす展開だと分かったからだ。最後まで読むとやはりそうだった。無二さんが父親の仇討ちをするためにウォールの内側"ラスパラ"へ入ったところで終わるという続編を期待させるラストだった。ああ、ずるいっ!



 

『ヘイトスピーチから身を守る クリエイターのためのWEB護身術/八幡謙介』を読んだ。

 誹謗・中傷とは形を変えた賛辞である ー出典不明(たしかイギリス海軍の将軍)

 上の言葉で検索したが出てこないので、ひょっとしたらどこか間違えているのかもしれない。何かの本で読んだのだが、どこで読んだのかさっぱり思い出せない。しかし、この本を読んでいると、上の言葉を思い出した。意味は合っていると思う。

 本書では誹謗中傷の種類を分け、どうしてそんな攻撃をするのか、その心理分析している。本書ではヘイトスピーチャーを倒す方法は書かれていない。むしろひとつひとつの誹謗中傷の裏側を見つめることによって、ネット上での悪口を自分に対する誉め言葉へと変えてしまうコペルニクス的転回を目指す奇書であった。 
 この本を読んで、彼が2chでdisられても平気の平佐でいられる理由が分かった気がする。
 これからも負けずに頑張って欲しい。

『泡姫ありえない/毒牙夜蝶』に見る弱者の優しさ

目の前で理不尽な悪事が行われている。それを『おい、そんなことはやめろ』と止める。自分には直接の被害は無いのにだ。そんなことは現実では絶対にありえない。大抵そんな悪いことをするのは、多数を形成している権力者側か狂人の類と相場が決まっている。
普通の人はそれらを倒しきるほど、もしくは敵わなくても抵抗しようと思い切れるほどは強くはないので、自分の身かわいさに見て見ぬふりをするのが一般的だ(そんなことはない?本気でそう思うのならあなたが権力者か、もしくは狂人かだ)。
それができるのは絶対的な力を持った強者か空気を読めないうっかり者ぐらいである。
いや、子供の頃は正義感を持った子もいる。だが大人になるとそんな人はいなくなるようだ。大した力も無しに大人になるまで正義感を通そうとすれば狂人コース一直線間で違い無しである。
見て見ぬふりをするのは心が痛いので、むしろ理不尽なことをされている側の方が悪いと思ったりもする。そうすれば自分の無力さを噛み締めずにすむからだ。これも弱者ゆえのこと。
そんな弱者でも、ある種の優しさを持つことはできる。
目の前の悪を倒したり、不幸な境遇から助けたりはできないが、同じ境遇に堕ちるということはできる(坂を登るのはキツいが落ちるのは簡単なのと同じで、堕ちる勇気さえあれば誰にでもできる)。
ぼっちの時に他にもぼっちがいれば安心できるし、ムカつく野郎にいびられているのが自分だけでないと分かった時もそうだ。どんなに不幸な状態でも自分と同じ境遇の人間が存在するというだけで人は慰められるところがある。
一緒に同じ境遇に堕ちたところで何の生産性もない。人類全体で見れば不幸が倍になるだけなのだが、そこには破滅的な心の救いがある。
紅い雨では強くて優しい男が出てきたが、今回は弱くて優しい女が出てきた。冒頭は崖っぷちの風俗女の話だと思ったが、読み終わる頃には破滅的な優しさを持った良い女に変わっていくので凄いと思いました。

余談だが、作中二度見したところがある。ありがたい事だと思った。拙著を読んだ人ならニヤリとできるだろう。

【追記】カウフィールドさんから寸評を頂いたのでここに掲載します。
宣伝でも何でも好きに使ってくれだそうです。

『エンジェルのアリエルはデリヘルに堕ちた』
悪に立ち向かう力が無くても我々は生きていかなくてはならない。
それでも彼女は自分を傷付けながらも愛だけは手放さなかった。
破滅的な愛がここにある。
   ーカウフィールド

『未来撃剣浪漫譚 ANTHOLOGY』次作への期待を植え付けるズルい二太刀

 分量的に予想はしていたが叡山も無二さんも今回は出てこない。仇討ちも無しである。彼が去ったあとの芹沢事務所周辺で起こった出来事の短編二つが収録されている。前二作を読んでいないと内容はさっぱり分からないだろうと思われる。読んだ人にはあっという間に読めてしまうだろう。
 それにしても最近八幡さんは上手くなったと思う。引きが上手くなった。前も言ったがずるいとも言っても良い。実を言うとADAUCHIは一作で完結するものだと思っていた。まあ、色々あるだろうがこれで終わりだろうと。それが前作、今作と続いておいおい次はどうなるんだよと言いたくなるような物になっていた。
 これは二話とも後のシリーズに効かせる伏線だと感じた。それがシリーズのラストか途中か、それともラストか(私ならラストに持ってくる)。もしくはこのアンソロジーを読んでいなくても分かるような微かなネタにするか、読んでいないと分からないような強いネタにするか、まったく読ませない。
 これは次回作への期待を植え付けるズルい作品でした。 

『カスタマレビュー/八幡謙介』のカスタマレビュー


2 3人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
☆☆☆☆☆こういう物が出てくるから油断できない
by悪ワーズワース

 正確には明言されていないが架空の新人賞、砧川賞を取ったある作家のデビュー作のカスタマーレビューを創作したもの。ワナビの嫉妬、お堅い文学野郎、ミーハー、頭のおかしい人、色んな人間を描写する。
 個人的にはスワンさんのレビューが面白かった。多分3回読んで、3回とも最後に「っおい!」と心の中でツッコミが出た。 

 内容は本当にカスタマレビューだけで、何かの陰謀が浮き上がったり、事件が起こったりはしません。なので当然クライマックス、オチのような物もありません。
 まずはサンプルを読むことをオススメします。それで(作中の)カスタマレビューのひとつかふたつは読めるはずです。なんだこりゃと思いでしょう。それがずっと続きます。物語を求める人は要注意です。そんな物は一切ありません。

 私はこういう形式の本を読んだことはないのだが、マジックリアリズムという手法で既存の物らしい。こういうニッチな物が出てくるのもKDP ならでは。しかし、一発芸という感も否めない。

 著者の過去作(ADAUCHIシリーズ以前)から読んできて、その流れの中でこの本が出てきたから、星5つという評価だが、もし初めて読んだのがこれなら星4つ、いや3.5辺りではないかと思われる。そして、他の本を手に取ることはなかっただろう。
 まだ著者の本を読んでいない人がいるのなら、2、3冊ぐらいは読んでからの方が良いでしょう。彼がけして一発屋ではないことが分かるはずです。

 しかし、意外な物を読んだ。こういうものが出てくるから八幡さんは油断できない。良い刺激を受けた。

『アルテミスの弓/夏居暑』己の力で真実の門を叩け!

 宝くじの不正を暴くというのがメインストーリーで『全てを疑え』という言葉を登場人物に語らせている。話の流れではお上の言うことを真に受けるなという意味になるのだがが、ここはあえて額面通りに受けとると、主人公達がやった事は本当に真実だろうかという疑問が持ち上がってくる。もしかすると宝くじの不正を暴いた証拠動画は実は偽物でそれを信じた世間が現実を動かしたという可能性も疑えてくるのだ。一体真実はどこにあるのか?結局、これは情報を一方的に受ける限り真実を見出だすことはできないということを示している。
 『全てを疑え』という言葉は不正を暴いた俺たちでさえ疑え。じっとしていては真実が本当に真実かどうか分からない。本当の事を知りたければ己の手で真実の門を叩け、己自身で真実を体験しろということではないだろうか。
 なんとなくイディオットと雰囲気が似ていると思った。

月狂四郎さんが新作『鉄姫』をリリース開始

月狂四郎さんが新作『鉄姫』をリリース。
一行読んだ感じではかなりの疾走感があります。
一行目からこれで途中から失踪してしまわないか私は心配ですが、月狂さんならきっとやってくれるはず。

鉄姫
月狂四郎
2014-11-06


 
 


(Amazonより引用)
内容紹介

 ラスト一行の衝撃! 君はHIROの告白に耐えられるか? 
 伝説のヘヴィメタルバンドIRON MANTISから、カリスマ的な人気を博したヴォーカリストであるHIROが脱退して半年が経った。HIROが独り「自分の心を整理するため」と開始したブログには、今まで公開されてこなかった新事実が続々と綴られていく。 
 日に日にそのアクセス数は勢いを増していき、週刊誌やIRON MANTISメンバー、そして元関係者まで巻き込んで、隠された事実を次々と暴いていく。 
 HIRO脱退の裏側にあった真実とは? そして、誰にも打ち明けられなかったHIROの秘密とは? 
 ブログや週刊誌の記事だけで進められていく、新感覚の長編バンドミステリー。 


文字数は100,000字ほど 


こんな読者にオススメ 

・好きなバンドからお気に入りのメンバーが抜けて「いっそ殺してくれ」ぐらいの苦痛を味わった事がある方。 
・「なぜバンドは解散するんだろう?」と思わず夕日に染まった街を遠い目で眺めてしまう方。 
・「もしあのバンドが復活してくれたら……」と淡い希望を胸に抱きながらも、つい再結成ブームを揶揄して自分が嫌になりかけている方。 
・再結成を揶揄するだけしておいて、密かにそのバンドの新譜をAmazonのレビューで絶賛した方。 
・正直自分のいたバンドのキーボードが好きだった方。 
・さっさと告白すれば良かったのに、そのキーボードがギターの人と付き合いだして人生で五本の指に入る失敗をしたと今でも特大の後悔を拭いきれない方。 
・結局二人の結婚式でラブ・ソングを歌うんだけど「あの涙はみんなが思ってる涙じゃないんだ……!」と家に帰ってからもう一回泣いた方。 
・好きなバンドのブログを読んでたら「先代のボーカルでーす。今は二児のママでーす」という記事があって、よく見たらその先代が自分の二歳下で「俺は何やってるんだろう?」と本気でヘコんだ事がある方。 
・それでも色々考えた末に「ボロボロになりながらも夢を追いかける自分がそんなに嫌いじゃないや」と晴れやかな気持ちになった事のある方。 


※本作の表紙は「星宝転生ジュエルセイバー」のフリーコンテンツを使用させていただきました。 
使用した絵の出典 
タイトル:[生方 すみれ+] 
URL:[http://www.jewel-s.jp/] 

牛野小雪の小説はこちらから↓
牛野小説の小説 in キンドルストア