やっと蒲生田岬の改稿が終わりました。話自体は変わらないけれど、以前より読みやすくなっています。5月9日以前の版を持っている人はアマゾンに申請すれば、最新版をダウンロードできます。 ※最新版に更新すると旧版は読めなくなります。



 改稿したついでに表紙にも手を加えた。といっても文章の方と同じで大きくは変えていない。具体的には以前の表紙は白く焼けたようになっていたので、全体の明るさを落として、コントラストは強くして色をハッキリさせた。(コントラストの意味は分かっていない)それとタイトルの字をちょっとだけ太くして読みやすくした。
 だけど蒲生田岬をちゃんと読める人が何人いるんだろうか? 私もこれを書き始めるまでは何と読むのか知らなかった。ちなみに“かもだみさき”とよむ。“がもうだみさき“ではない。でもパソコンで打つ時は”がもうだみさき”と打っている。

蒲生田岬 表紙案比較



能をつかんとする人、「よくせざらんほどは、なまじひに人に知られじ。うちうちよく習ひ得て、さし出でたらんこそ、いと心にくからめ」と常に言ふめれど、かく言ふ人、一芸も習ひ得ることなし。 −徒然草 第百五十段

 上の言葉は徒然草からの引用。うまくなってから人に見せようと思っていればいつまで経っても上達しないという意味。下手なうちから表に出て、芸を磨きなさいと後に続く。でもそれって難しいよなぁ。下手と思っているうちはなかなか表に出せない。この言葉に今でも共感できるということは、何百年経っても変わったのは社会環境だけで、人間性は何も変わっていないらしい。

 何でも公表してみるもので、先々週にグッドライフ高崎望の新旧の表紙画像を上げてみたら【→とある作家の執筆日記 No2『KDPの表紙問題』『推敲と筋トレ』、何人かの人が表や裏で色々と意見をくれた。誰とは言わないがツイッターのDMで具体的な案を指南してくれた人がいる。せっかくなのでグラデーションツールや照明効果を使った時に縞模様ができないようにするにはどうすればいいか教えてもらった。実はかなり高度な問題らしい。たしかその現象の名称はトーンジャンプ。グーグルで検索すれば解消方が色々出てくるが、知らない単語やツールがいっぱい出てきたので、さらなる魔境に入りそうだった。早々に退散する。
 うしの、こういう時は逆に考えるんだ。縞模様なんか出ちゃってもいいさって考えるんだ的な発想で、上の画像の背景には意識的に縞模様を描いてみた(下から上へグラデーションしている)。これならいつでも使える技だ。 
 上のアドバイスをくれた人は魔術的な腕前でトーンカーブを解消してくれたのだが、正直言って、トーンカーブを解消しても大して良くはならなかった。たぶん根本のデザイン自体に何か問題があるんだろうなぁと思いながらも、解決作は出ないので放置しておいた。

 アドバイスをくれた人は“いつでも相談してください”と言ってくれたので『幽霊になった私』を出した後に『獅子の檻』という次に出す本の表紙について、さっそく意見を貰いにいった。後で考えると“いつでも相談してください”は社交辞令だったのかもしれない(それを生業にしている人だし)が、“ああ、これはこうでああするといいですよ~”と、簡単なアドバイスを速攻でくれた。
 そのアドバイス通りにやると確かに良くなった。だけど、すぐにまた意見を聞きに行くのではなく、もうちょっと手を加えて驚かせようとした。初心者にありがちな“独自のアレンジ”を加えようとしたのだ。
 一晩かけて“独自のアレンジ”を加えたのだが、寝る前に今までやってきたことを確認すると愕然とした。気付けば彼が最初の指示通りに加工したものが一番良かった。この一晩私は何をやっていたのかと落ち込んだ。それと同時に“一目見ただけで凄すぎる・・・・・神かよ・・・・・・”と心の中でつぶやいた。それを本人に伝えると、またパパッと言葉を貰えたから驚いた。本職は違うなぁ。わりと良い感じにできるようになっていたと自信はあったんだけどなぁ。

 蒲生田岬の改稿をしている途中にインスピレーションが降ってきたので、グッドライフ高崎望の表紙にまた手を加えていた。一番表紙を変えている作品なんじゃないだろうか? 下の画像はグッドライフ高崎望の表紙の変遷(実はもっとある)。右下が最新。
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各表紙の間にある白い楕円は水泡。右下で落ちているのはレンズマメではなくソラマメ。描き方はくみたさんに教えてもらった。毛束感はまだ試していない。


くみたさんまでまだまだ距離がある。でもレンズ効果を意識してみると(今見てみると逆になっているのもあるが・・・・・・)、けっこうそれっぽくなったので、これは“独自のアレンジ”ではないと思う。
レンズ効果


勢いでヒッチハイクの表紙にも手を加えた。右下が最新。

ヒッチハイク 比較


 二案では忠則君をスマートにしすぎた。作中の彼とマッチしないので“独自のアレンジ”をしてしまったようだ。三案では左端で見切れている彼の左手を表紙の真ん中に持ってきた。ヒッチハイクのサインだから作品のイメージにもぴったり。どこかで見た事ある気はするが気のせいだろう。自分の左手を見ながら描いた(描いた後で反転させた)。生命線とか指紋を忠実に描いていたらおじいちゃんの手みたいになったので、関節以外の線を消したらずいぶん寂しくなった。だから、一案で没にした文字を手に入れた。
 三案のままだと左側が詰まっている気がしたので、イラストの位置を変えていたら真ん中が寂しくなったので道路を描いた。タイトルの字が道路と同じ明るさだったので黒で縁取り。


 最近色んな人からアドバイスを貰えるので以前より描ける事が多くなってきた。するとフォトショップで特殊効果を使う事が少なくなってきた。今までもっと色んな機能を使いこなせるようにならなきゃと思っていたけれど、ブラシ一本でもできることはたくさんある。淡波さんに手描きで文字を描くという概念を知った時は“文字を描いてもいいんだ”と目からうろこだった。
 これって小説でも一緒で、まだ腕がつたない時や自信がない時は色んな言葉や言い回しをたくさん使いたがるけれど、ある程度書けるようになると、短い言葉で同じ意味の言葉をスパッと表現できるようになる。

 ここまで絵の話ばっかりしてきたけど、牛野小雪は小説家。このままだとアートの世界にのめりこんで液タブ買っちゃいそうな勢いだったけど、アマゾンで液タブの値段を見て、一気に熱が冷めた。てっきり1万円ぐらいで買えると思っていたら最初に出てきたのが10万円でびっくりした。その隣は20万。こりゃあまだマウスで描いていた方がいいなと思った。それに手で描いても大して変わらないし(むしろ描き直せるので手で描くより上手いと思う)、液タブにしたからといって絵が上手くなるわけでもあるまい。最新のPCを買っても、それで良い小説が書けるわけではないのと一緒。

(2016年5月11日 牛野小雪 記)

先月新刊出しました。


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追記:一年前と比べるとうまくなったと思う。
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この絵は特殊効果使いまくり。今ではどうやって描いたか思い出せない。Kindle fireのアプリで描いたのは覚えている。