愚者空間

牛野小雪のサイトです。 小説の紹介や雑記を置いています。 あと短い話とか。

2015年03月

題名:私のアイリス
作者:T・S・カウフィールド 

 あなたは平べったい猫を知っているでしょうか。道路で車に延された猫じゃありません。平に生まれて、平のまま育ち、平のまま死ぬ不思議な猫の事です。

 個体差はあるが平べったい猫は厚さは大きくても指一本分ぐらい。子猫だとノートより薄い。そんな体でどうやって歩くのかというと、話は簡単。彼等は空を飛ぶのです。

 満月の日の翌日などはたいていビルの合間で体を波打たせながらヒラヒラ飛んでいる姿が見えます。じっと見ているとしょっちゅうビルの窓にいますが、体が平べったいので衝撃もさほどないようです。猫漁師に聞いた話では体に当たってもバレーボールを軽くぶつけられたぐらいの衝撃だとか。

 白の平べったい猫は縁起物でメスの成猫だと30万円で取引されるのだと聞きました。一番安いのは黒で、こちらは高くても2万円ほどしか値が付かないそうですが、数は多いので黒専門で捕る漁師もいるそうです。毛色の違いで捕り方が変わるんでしょうか?

 私の家の平べったい猫はメスのサバ猫でとても大人しい子です。名前はアイリスと言います。実は先日、急に暖かくなった日に窓を少しだけ開けていると、彼女はその隙間からするりと逃げてしまいました。

 私が慌てて外に出た時にはもう遅く、アイリスは空高くヒラヒラと飛んでいってしまいました。ああ、アイリス。私のアイリス。彼女は何処へ行ったのでしょう。

 私は近所を走り回って何日もアイリスを探しましたが、影すら見つかりませんでした。近所の猫おばさんに聞いても知らないそうです。もしかして犬やカラスに襲われたのでしょうか。毎日が不安でたまりません。 

 さて、ここまで読んでくださった方には大変に申し訳ないのですが、実はこの話は嘘ばっかりです。平べったい猫はいません。猫漁師なんて聞いたこともありません。当然ぶつかった衝撃の強さや取引される猫の値段のことも全てがデタラメです。私の作り話です。

 でも私のアイリスがいなくなったのは本当です。ある日手鏡で彼女の顔を見せてあげたら、突然何処かへ逃げてそれっきり姿を見せなくなりました。これは20年前の話だから、きっと今頃はお空のお星様になっていることでしょう。

(おしまい)

○KDP作家60分一本勝負、2015/03/29 お題 『平』で書きました。
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 一回目の改稿はいつも長くかかるのだが、今回は一週間経っても半分も終わらない。最低三回は回すので今日までのペースが続くならあと三、四週間後? まあ、二回目、三回目と修正する部分が減ってくるので一概には言えないけれど、リリースはまだまだ先の話になりそうです。
 リリースはまだですが、目処は付いてきたので神社にお参り&籤引きをしてきました。籤引きの方はちょっといわくがあるので来週の進捗状況に結果を書こうと思います。

 その神社は猫を奉っている神社のせいか行くと必ず猫がうろうろしているのですが、人馴れしているので呼べばたいてい寄ってきます。絶好の猫ポイントだ。私が白に黒のぶち猫の猫(子供に一番人気だそうだ:神主談)を撫でていたら、神主の人が猫を集めてい少し話をした。
 
 何でも昔は2、30匹ぐらい猫を放し飼いにしていたのだが、ある時から夜な夜な猫を襲う輩が出てきて、手足や尻尾を切られたり、殺されたりするので今は2、3匹しか飼っていないのだとか(ちなみにそう話す神主の側には猫が4匹いた。遠くにも猫の姿が見えるので計算が合わないが黙っておいた。それとも私が見ていたのは猫の幽霊か!?)。
 
 話を補足すると、元々神社のある辺りは捨て猫の多い場所で、その捨て猫を神社が飼うという形だったのだろう。じゃあその神社の庇護を受けられない猫はどうなるのかというと、今は裏山で群れを作っているそうだ。全部で60匹もいるらしく、その猫達が神社の猫をいじめるらしい。

 なるほど、ときどき見る愛想のないやさぐれ猫はそういう意味だったのかと納得する。

『真論君家の猫』では屋根党員と野良党員は別段仲は悪くないという設定で、ミータンがジロスケから狩りを教わるという話があったが、現実ではそうでもないようだ。

 猫、人、両方に襲われるので暗くなる前に神社の猫は社殿に匿うらしい。日向で体を伸ばしているような猫も見えないところでは苦労しているのだというお話でした。


ちなみにこの話に出てくる猫のモデルはこの神社猫である。大傑作を書けないのは猫を誘拐していないせいだろうか?
カウフィールドは牛野小雪の別人格。
読み切り短編 猫との密約/T・S・カウフィールド

真論君家の猫もよろしく。


 

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題名:サクセ・サイフォ
作者:牛野小雪

A子:ねえねえ、知ってる。サクセ・サイフォ
B子:サクセ・サイフォってなに?
A子:エミちゃんにね、新しい彼氏ができたんだって
B子:ちょっと待って。だからサクセ・サイフォってなによ
A子:そんなことはどうだってサクセ・サイフォでしょう? 今はえみちゃんの話をしているんだから

えみちゃん現れる

えみちゃん:サクセ・サイフォ~。何の話をしているの?
A子:サクセフォ~。何でもないよ。
B 子:えみちゃんも。サクセ・サイフォってなに? 
えみちゃん:いやあねえ、Bちゃん。変なこと言わないで。猫が塀の上を歩くわ。猫といえば前に家の裏で野良猫撮ったの。見て見て

エミちゃんが携帯を出す。A子とB子がそれを覗く。

A子:かわいい
えみちゃん:でしょでしょ。最近子猫を生んで引き連れて歩くの。
B 子:・・・・サクセ・サイフォ?
A 子とえみちゃん:本当にそうね。サクセフォだね

(終わり)

論評:サクセ・サイフォー
筆者:祖谷田 八津雄

 サクセ・サイフォーという謎の言葉がA子、えみちゃんからB子に転移していくさまが表現されているのは分かった。だが相変わらず謎を最後まで読者に明らかにしない作者の遣り口は物書きとして甚だ不誠実である。
 そもそも作者が何の意図をもってこのような物を書いたのか私には分かりかねる。卑しくも公に向かって文を書く者なら読者を正しい方向に啓蒙するもの、もしくは読んで今後の生活に役立つもの、あるいは社会に対する不穏を煽るものであってもよろしい。
 だがこれには何もない。ただのがらんどうである。作者の独りよがりである。このような物が公に出るのは社会の損失である。そもそも・・・・・・・


論評はここで二つに破られていた。もう片方は見つからないので読むことはできない。


(おしまい)
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月下の二人のコピー

題名:月下の二人
作者:牛野小雪

 一生に一度しか出会えない人間がいる。目の前にいる男がそうだった。満月狂四郎。相手は剣を真っ直ぐ立てて月に向けていた。私はそれを受けるように中段に構えている。持っているのはお互いに真剣だった。

 こんな時代に、いやこんな時代だからこそ私は剣の腕を磨いてきた。それは相手も同じで共に絶人の域に達している。実際に腕は見ていないが厳しい修行をくぐり抜けてきた者同士で通じあえるものがあった。

 立ち合うことになったのはお互いに惹きつけるものがあったからだ。相手がどういう剣を使うのか。どうしても知りたくなった。そして本当にそれを知るには極限の状態で立ち合うしかない。私は真剣での立ち合いを申し込んだ。相手は待っていたかのようにすぐ応じた。

 会ったその日に私達は斬り合うことになった。真剣で戦って必ず死ぬとは限らないが覚悟はしていた。半端に生き残るよりは自分の命を全て切られて死ぬ。そう決めていた。もし勝つなら必ず相手を殺すだろう。それは相手も同じはずだ。相手が放つ気に甘いものは一切なかった。これこそが私の求めていたものだ。

 頭上の木から葉っぱが落ちる。見なくてもその気配を感じた。木の葉は誘われるように二人の間へ落ちてくる。その木の葉が地面へ落ちるその寸前、二人は同時に動きすれ違った。冷たい風が首を横切る。私も相手の胴を薙いでいたが手応えはなかった。 

 再びの対峙。そう思っていたのは私だけで相手は剣を鞘に納めて背を向けた。
 私はその背中に向かって叫ぶ。
「逃げるのか、卑怯者!」
 しかし、相手はそれに答えず私から離れていく。
 私はもう一度叫んだ。
「お前の剣は偽物か!俺と戦え、狂四郎!」
 それでも相手は足を止めずに歩き、姿を消した。腹はたったが、あの背中を切ろうとは考えなかった。私がしたかったのは殺しではない。
 
 始めは立ち合いの途中で逃げた満月狂四郎に対して怒っていた。だが途中からは相手を見誤った自分に対して怒っていた。絶人の域に到達したと思ったのは慢心だったのではないのかとさえ疑った。

 家に帰ってきた私は手を洗うために洗面所の前に立った。そして満月狂四郎が剣を鞘に納めた理由がやっと分かった。勝負はすでに着いていたのだ。こんな剣があるのか。とても信じられなかった。ボトン。うつむいた首が洗面台に落ちた。私はすでに切られていたのだ。

(終わり)

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題名:知られざる世界へ
作者:牛野小雪 

 とうとう最後の時がきた。誰にだって初めてはある。要はビビらないことだ。一度飛び込めば勝手に向こう側へ着いてるはず。といっても向こう側がどこかは分からないし、あるかも定かではない。実際に行ってみれば分かることだ。

 ドアの向こうから鍵をじゃらつかせた看守が歩いてくる。今日はいつもと違って何人もの足音が一緒だ。看守がドアを開ける。やはりその後ろには若くて強そうなのが3人も立っている。俺が怖じ気づいて暴れると思っているのだ。一番後ろには黒衣を着た神父が立っている。

 看守に連れられて監房を出た。もう二度とここに戻らないことになっている。何故なら今日は俺の死刑が執行される日だからだ。どうせ死ぬと分かっていたのだから部屋に思い入れなど作らなかった。さっさと部屋を出ていく。俺が逃げると思ったのか若い奴が一度俺の胸を抑えた。

 白い部屋へ来た。初めての部屋だ。最後の食事は要望が出せたのでピザとコーラを頼んでおいた。机の上にはピザ屋の箱とコーラの瓶がある。なんてこった。まさか本当だったなんて。ピザの種類を選ばせてくれなかったのは気に入らないが言い出せる雰囲気ではなかったので、黙って机の上にある物を食べた。

 また部屋を出る。どうせここへも二度と来ない。そしてまた新しい部屋。ここから出ることはないだろう。輪に結ばれた縄が天井からぶら下がっていたのだ。看守が何か言いたいことはあるかと言ったので無いと答えた。部屋の中央に進んで首に縄がかけられる。床には切れ目があり足で叩くと軽い音がした。ここが開いて首が締まるのだ。

 神父が聖書を読み上げる。人生で寺と神社は見たことがあるが教会はない。だからキリスト教の神父を呼べと言った。何度か神の教えを聞いたが信じられることではなかった。あんたは天国を見たことがあるのか。一度神父に訊いたことがあるが彼はその言葉に答えなかった。
 
 死刑囚の生活にあたって決めていたことがある。いやこうなる前からずっとだ。絶対にビビっているところを見せないこと。常に余裕の態度を見せていること。要は痩せ我慢だがそれが退屈な生活に張り合い与えてくれた。しかしこれが死刑の原因にもなったのだ。

 アーメン。神父が胸に十字架を切った。看守達が離れていく。しばらくの静寂。ガコンと激しい音が響いた。床が無くなる。体が宙に浮く。俺は知られざる世界へ落ちていく。

(終わり)
 

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 月狂四郎さんが新作『鬼娘の千倍返し:ガンズ・オブ・パクリオット 上』をリリース開始しました。題名や内容紹介からして桃太郎のパロディのようです。メタルギアもあるのかな。
 元ネタを骨組みにしてそうとう羽を伸ばしたのではないでしょうか。

 上巻の方は後日プライスマッチで無料になるそうです。興味のある方は試しにダウンロードしてみてください。

【以下引用】



「お前は自分が害虫を駆除する時に、いちいちその理由を考えるか?」 
 わたしの島を襲撃した桃太郎は、冷たく言い放った。 

 ――日本中で愛読されている桃太郎。表向きは押しも押されぬ英雄だが、鬼達にとってはとんでもない侵略者だった? 
 誰もが一度は抱いたことがあるであろう懐疑を、KDP界の問題児、月狂四郎が長編小説にして解き放つ! 


 島で退屈な日々を送っていた鬼娘(きむすめ)のちひろは、ある日桃太郎に鬼が島を襲撃され、故郷を追われることになる。毒牙夜蝶の経営する遊郭で拾われた彼女は、地獄送り嬢(=デリバリーヘルス嬢)という稼業にその身を隠しつつ、桃太郎一派への復讐を誓う。 
 ラブホテルを爆破し、敵が生息する山をミサイルで粉砕したちひろは、敵を恐怖のドン底に叩き落としつつ故郷の奪回に奮闘する。 
 月狂四郎の作品史上、最やりたい放題となったツッコミ所満載のハードコア御伽草子。 
 こんなおとぎばなし、子供には絶対見せられない

文字数は上下巻あわせて150,000字ほど 

上巻は何字ほどなんでしょうか、謎です。
追記:8万字ほどだそうです。 
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